親友は、それでも信じたかった


 これは恐らく『誘導』になるのだろう。『太陽の言っている考えこそ正解に違いない』という、物事を都合良く理解したい人間の性質を利用した誘導。

 本当はオレの考え方だって正解とは限らない。あくまでアレはオレの考え。神様の答え合わせではないのだ。ユウもそのことを分かっている。けれど、ユウは信じたかった。オレが自分のそばから離れることはないのだと、信じたかったのだ。


ーー騙すみたいなことしてごめん。オレはユウに嘘をついてでも、ユウの心を守りたいんだ。


 安心したからか、眼をうとうとさせ始めたユウに微笑みかける。


「おやすみ、ユウ」


「…おやすみ、太陽」


 親友のゆったりと落ちていく目蓋が完全に閉じて暫く経った後、健やかな寝息が微かに聞こえてくる。その時にやっと、あれだけ興味を引かれていたユウの寝顔をじっくりと見ることができた。


「…ははっ。クマはあるし、また目元は元通り赤くなってるしで、ブサイクなカオ。だから保冷剤で冷やしながら寝てって言ったのに」


 小声で文句を言っていると、『太陽』と名を呼ぶユウの寝言が聞こえてきた。それは、今朝強盗犯の元へと向かおうとしていたオレを引き止めてくれた声と全く同じでーーー


「ほーんと………かわいいやつ」


ーーーこれでは、いつか自身が消えてしまうその時が訪れても簡単には手放せそうにないなと、一人寂しく笑った。

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