俺達は、平行線


 生者の俺と死者の彼は、決して交わらない平行線上に立っている。しかしその二本の線は、限りなく近い場所にお互い存在しているのだと、俺は微笑む彼を見て感じていた。だから、お互いの存在を近くに感じられるし、声のやり取りも出来る。


 死別してもそばにいたいとお互いに願ってしまう俺達だから、平行線同士が磁石のように引き寄せあい、こうして再会が叶ったのかもしれないーーーいつの日かに訪れる永遠の離別を今だけは考えていたくない俺は、彼が俺にとって、決して交わらないが離れもしない平行線上にいるのだと思い込んだ。


「それにしても、ユウってば、本当にオレのことが大好きだなぁ。こんなイケメンに好き好き言われたら、流石にオレでも照れちゃうよ。そんなにオレの熱狂的なファンなら、特別にファンサしてあげようか?」


 正面から、バチコンとウインクが飛んで来る。

 どうやら、おちゃらけられるぐらいには元気になれたらしい。


「じゃあ、してもらおうかな」


「オッケー!じゃ、見ててね。…タイトル、ジェットコースターが止まって直ぐのユウのモノマネ。『…あぁ、死ぬかと思った』」


「いや、モノマネって言うか、俺のあの時の台詞を空気椅子のポーズのまま真顔で言っただけだろ」


 すかさずツッコミを入れれば、彼はふふっと吹き出し、直ぐにあははと白い歯を見せて笑い出す。曇り空から一筋の光が射し、やがて晴れていくような、そんな笑い方だった。


ーーやっぱり、太陽には笑顔がよく似合う。


 胸の奥に、安堵と喜びが広がっていく。

 今の俺の顔は目尻が少しだけ優しく垂れていると、鏡で確認せずとも分かった。

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