第6話 ネンド
「ウィーン!ガッシャーン、ロボットが通りまーす!
そこの車をどけてくだーい!」
満(みつる)が言う。
ロボットが足を振り下ろしながら、
床に散らばった車やブロック形状のおもちゃに向かって歩みを進める。
「街が大変だ!目覚めろ!クマゴロウ!」
修(おさむ)が言う。
クマの人形がベッドの布団の中から顔を出した。
満と修。
二人は兄弟でふたりとも5歳になる。
ロボットVSクマの人形(クマゴロウ)の戦い。
二人には手を使わずにものを動かせるチカラがあった。
「ブーン!!!」
修が右手で指揮者のように宙になめらかな軌跡を描くと、
飛行機のおもちゃがロボットに向かっていく。
「くらえ!」
飛行機をロボットの上空で回転させると
左右の翼部分に乗せていたブロックがロボットに向かって落ちた。
「効かぬわー!」
満の操るロボットがコマのように回りだし、
ブロックを弾き飛ばした。
その間、クマゴロウはロボットと対決すべく
布団からゆっくりと抜け出し、床に着地を終えた後、
一歩、一歩と二人の方へ近づいている。
「ダーン!ダーン!」
満が車や床に散らばったおもちゃをロボットで蹴飛ばす。
「街がピンチだ!クマゴロウはまだか!」
修が言うと、クロゴロウが手を床に着け、
四つんばの姿勢になり、
咆哮するように口を大きく開け威嚇のポーズをとった。
「ガオー!いまいくぞー!」
修が言う。
クマゴロウがよつんばの状態で走りだす。
「来てみろ!」
満のロボットが両腕を広げ構える体制を取る。
ドッシーン!
クマゴロウがロボットに体当たりをすると、
その衝撃でロボットは壁際にある本棚まで飛ばされた。
「くそぉ…、ロボットが回復するまで時間がかかる。いけ!ミニミニ集団!」
満がそう言うと、5センチ大の小さな兵隊の大群がおもちゃ箱から飛び出し、
クマゴロウの身体にまとわりついた。
「えい!えい!」
小さな兵隊達はクマゴロウの身体を小さなこぶしで叩く。
「なにをこしゃくな!」
クマゴロウが身体をうねうねさせて振り払おうとする。
「助けてくれ!ガンマン!」
修の号令でこれまたおもちゃ箱からガンマンの人形が飛び出した。
ガンマンは腰のピストルを抜くと瞬く間にBB弾を放ち、
クマゴロウのまわりの小さい人形を弾きとばそうとした。
「はっはぁー、そんなものが当たるはずないだろー!」
満が言う通り、BB弾は的を得ず、部屋のあちこちに拡散していった。
「んー!もう!」
修はクマゴロウを床に寝転ばせて背中とお腹が交互に床につくように
ゴロゴロと回転させ、兵隊たちを身体から離れさせようと試みる。
「回復完了!」
満が言うと、ロボットの目がキランと光を放った。
クマゴロウも体制を立て直し起き上がると、
お互いが走って近づき、手押し相撲のような体制で組み合う形をとった。
「まけないぞ!」
修が言う。
「チカラでボクに勝とうなんて、まだまだ早い!」
満が言う。
ロボットとクマゴロウのチカラは均衡している。
ふと、押しつ押されつを繰り返す2体に大きな影が落ちた。
「怪獣だー!」
満と修が叫んだ。
怪獣のおもちゃがロボットとクマゴロウの頭上で
宙に浮かんで二人のほうを見据えている。
不意にガァー!!と大きく口を開けた。
二人がビクッとした瞬間、二人の後ろからもっと大きな影が
二人を覆った。
「こら!もう!こんなに散らかして!」
母親だった。
母親も手を使わずにものを操るチカラを持っていたのだった。
「もうすぐお昼だから、お部屋キレイに片付けて!」
二人が冷静になって部屋を見渡すと
あちこちにおもちゃが散在し、むちゃくちゃになっている。
「えい!」
と満が散らばったおもちゃのひとつを力を使って持ち上げると、
母親が頭をコツいた。
「こら!チカラを使ってもちゃんと直せないでしょ!ちゃんと手で直しなさい!」
確かに二人のチカラはまだまだ精度が良くなく。
部屋を片付けるには至らないものだった。
「怪獣だ。」
満が小さな声でつぶやいた。
「何?」
母親が言う。
ふたりはしぶしぶ部屋を片付けはじめた。
おしまい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます