黒い犬の森で……

@IchifuziMuu

第1話

暗い森の中、赤々と燃える焚き火があった。その火を囲むは、二人の男。

一人は白い髪、一人は黒い髪で二人とも年の頃は二十代半ばと思われた。

二人はこの森の向こうにある街へ行く途中だった。


「ねぇ、ユニ。ここ出るんだって」

黒髪の方が白髪に話しかけた。

「出るって何が?」

「これだよこれ」

黒髪はユニにお決まりのポーズをして見せた。

「ああ、そんなことかレオ。

この森は黒い ブラッグドックが、出ることで有名だからね」

「違う違う。そっちじゃなくて、騎士の幽霊が出るんだって」


レオがこの森の最寄りの村で聞いたことによると、この森で騎士の幽霊を見た人が何人も居るという。

中には、騎士の幽霊と黒いブラッグドック の両方を見た人もいるというのだ。


「へぇ。

大昔、ここには城があったそうだから、出ても不思議ではないかな」

「そうなんだ」

ユニとレオは 食後のお茶を楽しみながら、黒いブラッグドック の事を話しあった。


黒い ブラッグドックとは、その名の通り、黒い体毛をした犬で目は赤い輝きを放っているという。また、サルファーの匂いの吐息を吐くともいう。(サルファーとは燃える黄色い鉱物で、独特の不快臭が有る)

主な出現地域は、今ユニとレオが居るピールマンの森があるベリッツ、その隣国のエランフォラ、アディーの三国だ。

土地ごとに違った名で呼ばれる事もあるが、共通するのは特徴は先のようなものと関わると〝 死ぬ〟という事だ。

どのように関わると命が無くなるかは、土地によって違うらしく、エランフォラの墓地で見られる〝 墓守の妖精 チャーチンク〟と愛される黒い ブラッグドックであれば、墓荒らしは勿論だが、墓地で悪行を行った者達が命を落としていた。

ここピールマンの森の黒い ブラッグドックは、目を合わせたり攻撃を仕掛けない限りは無害で、それ故に目撃情報が多くなっているのだ。

 この違いは何からもたらされるのか、知る者は今のところ不在である。

 

 






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