第4話 お嬢様と生徒会のお仕事
入学式から、三か月が過ぎた。
「今の子、生徒会の……」
「あの人が婚約者の……」
廊下を歩いていると、こそこそ話している声が聞こえてくる。
ジェラちゃんの言ってたとおり、注目されてる気がする。
うーん。自意識過剰なのかなぁ。
直接なにかされたりしてないから、平気だけど。
「ご主人様は人気者ですねぇ」
「はーい、そこ。無駄口叩かない! お仕事するよ!」
「竜姫様、向こうの廊下は貼り終わりましたよー」
「ありがとうございます!」
私たちは、放送部にみなさんに手伝ってもらって、校内にポスターを貼っている。
これも、生徒会の広報のお仕事。
広報っていうのは。
生徒会新聞作って活動を報告したり。
今日みたいなイベントの準備をしたり。
えーと、つまり。
生徒会はこんな活動をしてますってアピールする仕事かな。
「終わったー! ごはんっ、ごはんっ!」
「ふぅ、今日は、このあと長いしスペシャルランチにしようかなぁ」
「ご主人様、あまり食べ過ぎると、あとが大変だからね?」
キナコと私は、学生食堂のある棟に向かっていた。
学生食堂は中等部の生徒と高等部の生徒のエリアに分かれてる。
カフェテリア方式で、好きなものを選んで会計するんだけど。
ランチメニューもあるので、それを選ぶこともできる。
スペシャルメニューは、デザートもついてて。お得なセットなのだ!
「なんだ、おそかったじゃないか」
「ははは、今日は大変だからな。しっかり食べておけよ!」
「クレナちゃん、おつかれさまですわ」
すでに、シュトレ王子とティル先輩、リリーちゃんは席に座っている
私たちは料理の載ったトレーをおいて、いつもの席に座った。
ここは、一般生徒が食べる場所から専用の階段を上がった所にある生徒会用のラウンジ。
階段があるから、あんまり好きじゃないんだけど。
生徒会メンバーが食堂にいると落ち着けなかったり騒ぎになったりするから、分けられてるんだって。
今の生徒会は。
三年生がシュトレ王子と、副会長のティル先輩。
ティル先輩は、短髪の赤髪のマッチョ風で、見た目通りのすごく豪快な人。
話しててすごく楽しい。
書記のグラウス先輩は、いっこ上の二年生。
長い水色の髪と顔立ちがきれいだから……美人のお姉さんに見える。
セーラー服着ても違和感ないんじゃないかなぁ、なんて。
無口なので、あんまりお話はできないんだけど。
あー、それと。ゲームでもこっちの世界でも、変な推理マニア。
でも。
影でいつもみんなのサポートしてくれてるのを、私はちゃんと知ってる。
それとあと、もう一人。
「おそかったのじゃ! はやく食べるのじゃ!」
長い黒髪でサイドだけ切りそろえている姫カットに、灰色の瞳。
私やリリーちゃんより幼く見える美少女は、もう一人の二年生。
会計担当のファニエ・キュリス先輩。
前世の日本人っぽくて、すごく親近感がわくんだよね。
ちょっと不思議で、でもカワイイなって思う。
ってことで、生徒会は全員で七人。
三年生と二年生のメンバーは、ひとりずつ辞めたちゃったんだって。
「グラウスは用事があって少し遅れるらしい。先に頂くとしようか」
「「「「「「いただきますー」」」」」」
今日のデザートは、イチゴのジェラート!
うん、美味しい。幸せだな~。
横でキナコがデザートをじーっと見てる。
あげないからね!
「ははは、キナコちゃん。オレの分のデザート食べるかい?」
「食べるーっ! ティルくん、ありがとー!」
「こら、ティル先輩でしょ!」
「ときにクレナよ、今日の司会は大丈夫なのか? もぐもぐ」
ファニエ先輩が、満面の笑みでハンバーグを食べながら話しかけてくる。
どきっ
思い出したくなかった。
せめてデザートを食べてる間だけは忘れていたかった……。
「大丈夫だよ、クレナ。すぐそばでフォローするからさ」
「ははは、そんなに緊張しなくても平気さ!」
「……僕の推理では大丈夫だと思いますが、フォローしますよ」
「ありがとうございます」
そう。今日は中等部生徒会にとって大事なイベントがある。
あまり得意じゃないけど、司会も広報の仕事なんだって。
ランチ後、階段を降りるとイザベラととりまきの子たちが待ち構えていた。
「ごきげんよう、生徒会の皆様」
「だれじゃ、この女」
「ごきげんよう、イザベラ様」
リリーちゃんが私の前に立って、イザベラに話しかける。
イザベラは、リリーちゃんを無視して、私に近づいてきた。
「おほほ。もしよろしければ、今日の国王陛下の視察パーティー、わたくしが司会を代わって差し上げますわ」
え? ホントに?
実はイザベラっていい子なの?
なんてことは……ないんだけどね。
ふぅ、そんなに睨まれても困るんですけど!
これも生徒会のお仕事ですから。
そう思って返事をしようとしたら、今度はシュトレ王子が私達の間に入った。
「ありがとう、イザベラ。でも、それにはおよばないよ。うちの広報担当は優秀なんだ」
「ですが……」
「いこう、クレナ」
王子が、私の手を引いて、その場を去ろうとする。
振り返ると、イザベラととりまきたちが、すごい表情でにらんでいた。
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