第3話 お迎えです
ロドリゴに捕まってから、たぶん一週間位は経ったと思う。
折れた手首はどうやら殆ど大丈夫の様だ。治癒力マシマシ状態だ。けど、それはロドリゴには黙っている。
油断させておくのにはそうしておいた方がいいと思うから、包帯も添え木もそのままにしている。
私の手の事は気になっているのかチラチラ視線を感じるけど、私が何も言わないのでロドリゴも知らんふりしている。痛いとも何も言わないからおかしいと思っているだろう。
それにしても、ロドリゴは不死身なのか、あの時私が傷つけた身体の方は何ともなさそうだ。
悪いけど、あの時は本気でロドリゴをヤルつもりだったので、自分のやったことについても全く反省はしていない。昔もロドリゴは手加減なしだったので、こっちはいつも本気だった。
この世界では治癒魔法というのがあるけど、大怪我を一瞬で治すようなものじゃない。
治癒力を高めて早く治すようには出来るけど、身体を槍などで貫かれて、直ぐにこんなに動き回れはしないんだけど・・・。
私の場合は、こんなに治癒が早いのは、二度目の召喚で巫女姫の力がもっと強くなっているのかなと思う。
前だったら、骨が折れても一週間で治る様な事は無かった筈だ。こんなに直ぐに怪我がなおるならスース―する傷薬をあんなに塗る必要もなかったのだ。
食事は日に二回。朝と晩に出されていると思われるので、それから考えると、目覚めてから一週間経過した辺りだとおもうのだ。
相変わらず、ロドリゴは、何を聞いてものらりくらりと適当な事を言って、食べ物を上げ下げするだけだ。
ただその食べ物というのが、私の好きな物が多く、それが何故なのかは前回の浄化の旅の時の私の食べ物の好みを覚えているのだなと思ったのだ。そういうのは、意外だった。
この男が何を考えているのか、ハッキリ言ってまったくワカラン。
だけど、王族に関しては、自分達の為なら人を殺すのは何とも思っていない奴らだ。王族に荷担しているのならロドリゴは同じ穴のムジナだから、やっぱり同じ人殺しなのかもしれない。
チャンスが来たら、どうやってここから逃げるか色々考えている。例の地図は見ていて飽きない。暇なので地図ばかり見ていた。
北にあるというアスランテの生まれ育った地・・・。
わあ、すんげー遠いな。でもいつか行ってみたい。
眠くなったら何時もの様に、リュック背負って寝袋の中に入る。全部片づけて、リュックをしょって寝るのだ。
その時が来たら、いつでも動けるようにして眠った。
そしてついに、地震の様な揺れで目を覚ました。爆音がする気がする?・・・来たのかも知れない。
寝袋をリュックの中に仕舞い込んだ。首輪を外す必要がある。
怪我をしていた手を縛っている包帯と添え木を外す。グーパーしてみると少しぎこちないけど、大丈夫だ。
両手で鉄の首輪を掴み目を閉じる。これを外せば直ぐにロドリゴにバレるだろう。
あいつが来たら、次こそ潰すつもりだ。うん。
この首輪の術の継ぎ目を探し、それを解いていく。電流がビリビリするような抵抗があるが、何が何でも外してやる。
ロドリゴの術の上をいってやる。魔力を込めた。
「ぐううううっ!」
冷や汗が流れる。これキツイ、マジきつい。あんのクソロドリゴめ!
首輪から、黒い呪術に使われた古語がゾロゾロと這い出て来る。私のポケットの中から人喰い蔓が伸びて、その先に花をつけると、食人花のように、あ~んと口を開けて、その呪いをムシャムシャと食べて行く。
黒い魔力(ちから)を失くした首輪は、突然、『バキリ』と音をさせて割れた。
「ふう、きっつ。なんちゅー術だ」
あいつには、これに使った呪詛まがいの封じが破壊された『返し』が向かっている。
少々ではない筈だ、受けてボロボロになれ。
今度は岩の地面に手を押し当てる。緑の眷属の力を借りて、封じを破る!
―――――――― パリ――――ン!
岩牢の結界が壊れた。
そして、牢の鍵を壊し、やっと地上に出られる。鉄の蓋を押し上げると、外に出られたのだ。
夜の冷えた空気が身体を取り巻いた。
すると、爆音や剣の打ち合う音、燃える館が目に入った。
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