第4話 不死者

 すごい、知らない騎士達や獣人やエルフ、ドワーフまで入り乱れて、黒騎士と戦っている。


 一言でいえば、魔法戦争とでもいうのか、魔力と魔力のぶつかり合いだった。


 遠目にもその様が良く分かる。


「一体どうなってるの?」



 あの黒騎士達はロドリゴが出しているのだと思う。


 本人は何処にいるのかしらないけど、忙しそうだ。私を追いかけてくるのは難しいかもしれない。


「ココ!結界を破ったのですね!」


 アスランテが私を見つけて走って来る。彼の純白の髪が懐かしかった。


「アスランテ!会いたかった」


 私はアスランテに走り寄った。すると救い上げる様に抱き上げて抱きしめられた。


 体格差ありすぎて、子供と大人みたいだ。でも嬉しい。


 彼に会えてものすごく嬉しかった。


 だから、彼の首に抱き着いて思い切りぎゅーって抱きしめた。


 アスランテが嬉しそうに私の顔に自分の顔をすり寄せて来る。


 これは、白い精霊さんとよく私がやっていたやつだ。


「お怪我は大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫。ちょっと怪我したのも、直ぐ治ったし」


「良かった。ここまで追ってきたものの、結界には手が出せなくてどうすれば良いのかと思っていたのです」


「ここに来ている皆はどうしたの?」


「ハンター達が招集をかけてくれた戦士達です。皆、巫女を取り戻す為に集まってくれました」


「すごい、そんな事になっているんだ。私が捕まってからどのくらい経ってる?」


「10日程です」


 アイスブルーの瞳が私を見て、優しく笑った。


「そう、もうそんなに経っちゃったんだね。何か他に変わった事はあった?」


「王から次の巫女姫を召喚すると一族に連絡があったそうです。次の付添人を用意しておくようにとの事だったと。それと、また獣人の村が一つ無くなりました・・・」


「ええっ?そんな・・・。それに巫女姫って、私がここにいたら新しくは喚べないはずだよね」


「ええ、それは間違いないです。だから、あなたを害するつもりなのは間違いないと思ったのです。国の瘴気が尋常でない速さで増えているのは確かで、貴女が攫われた事を知った『とり残された地』の者達は、貴女を取り戻すのだと集まりました。ミケロ一族とヴィドル一族も加わりました」


「じゃあ、あの騎士達は・・・アスランテとムーランの二人の一族なんだね」


「はい、そうです。この瘴気の状況はこれまでの歴史の周期から逸脱しています。それでなくとも歴史自体が王家に操られている状況ですから・・・、何か本当の事を隠すために言い始めた事の様にも思えます」


「ロドリゴの屋敷にいるのはどうして分かったの?」


「彼は、この屋敷の瘴気を隠そうともしていませんでした。それに貴女を連れて逃げる時も、フードを外して顔をさらしていましたから、貴女の居場所はすぐに分かりました。だから、最初は罠ではないかと疑っていたのです」


「・・・そう」


「ここを鎮圧したら、王城に向かいます」


「うん、分かった」


 ふと、燃えるロドリゴの屋敷の屋根の上に人影が見えた。


「あれは・・・」


 ボロボロの灰色のローブは燃えてしまい、ほとんど形を成していない。


 上半身は殆ど裸同然で、下はちゃんと履いてるけど・・・。


 その身体には、私と前に戦った時の貫かれた身体の穴が、くっきりと口を開けてそのまま残っていた。


 傷が治ったのではないのだ。そのまま残っている。どうしてあれで平気なの?


「やはり、彼は不死者だったのですね・・・」


「不死者?」


「既に身体は死んでいるのです。死んだ身体に術が施され、その身体に魂が貼り付けられているのでしょう」


「えっ、それって、一体・・・いつから?」


「―――それは、巫女姫、貴女が此処に初めて来るよりも、もっと前の話です」


 ストンと私の横に降り立った、神官服のムーランが答えた。相変わらず涼しい顔をしている。


「ムーランは知っていたの?」


「――――――そうですね、そうではないだろうか、と思ってました。おそらく、王族の異能とは、死者を操る力なのです」


「不死者を操る力?」


「ええ、死人を使い、魔力に変える・・・おそらくその様な力でしょう。ロドリゴは一度死んでいるのです」


 私は、ムーランのその言葉に息を飲み込んだ。













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