第2話 牢の中です2
寝て起きたら、朝だか夜だか分からない。
素敵な寝袋のお陰で、ぐっすり眠れた。
寝て起きたら、全部夢でしたという訳ではなく、やっぱり岩牢の中の寝袋で目が覚めたのにはガッカリした。
この牢には窓なんてものは無い。一番腹が立つのはこの鎖付きの首輪だ。本当に犬みたいだワン。
ふと見ると、牢の内側に食料が置かれていた。冷えたスープとパンだ。どうやら食事は出してくれるらしいけど。毒が入っていたら怖い。近寄って、クンクン嗅いでみる。
「あ、でも、美味しそうな匂い・・・」
薬草の餞別の時の様に手をかざしてみると、どうやら毒はなさそうだ。毛布も置かれている。
一応まだ生かしておくつもりらしい。
スープは冷めてるけど、美味しそう。付け合わせのパンも甘い豆が練り込んであるモッチリした物だった。
はむはむと口に入れる。旨いわ。スープも冷たいけど鶏の出汁のような風味で、具沢山だった。
野菜が柔らかく、くたくたになっていて、それがとても美味しかった。
あたし、豆パン好きなんだよね~。いろんな色のしっとりした甘い豆が入っていて美味しい~。
少しずつ味わって食べた。(もう一個食べたかった)
この牢の中で普通に魔力は使えるようだけど、外には出られない様にがっちり結界に阻まれている。
無理にここから出て、また直ぐにロドリゴとやりあっても、同じことになりそうだなあと、様子見する事にした。
折れた手首の様子をみると、腫れがだいぶ引いている。
すごいな巫女姫の治癒力。本当にこのまま治りそうだ。
考えない様にしているけど、アスランテがどれだけ心配しているかと思うと胸が苦しくなる。
あ、ムーランもね。
食事を食べ終えてしまうと他にする事もなく、リュックから薬を出して飲んだ。我ながら良く効く痛み止めだと思う。
それから、アスランテから貰った地図を出して眺める。
「今、私、どこにいるんだろ?」
思わず、独り言ちる。
するとこの地図にピコピコと赤い矢印が点滅しているのに気付いた。
ん?これが現在地って事なのかな?
この地図は魔道具だったんだと今更ながらに気付いた。
矢印は王都を指している。てことは、今は王都に戻っているという事だ。ここがどこなのか知りたくて、おもわずスマホの画像を広げるように指先で広げてみると、拡大された。
「ズームできる!この地図すぐれもの~」
どうやらここは城の中ではなく、ロドリゴの屋敷の地下の様だ。
それならば、まだ逃げ出すチャンスは幾らでもありそうだと思った。
「おい、エリザベス、ご機嫌だな」
突然、声をかけられ、実は飛び上がる程驚いたが、相手がロドリゴだと気付いたので、ぐっとこらえて振り返った。驚いたとか思われると腹立つ。
「機嫌がいいわけないでしょ。何言ってんだボケ」
「飯食ったか?」
そんな私を意に介さず、ジロリとトレイを見て言った。
「・・・ごちそうさん」
まあ、毒の入ってない食べ物に罪はない。
トレイに食器を乗せて入り口の近くに置く。片手なのでひっくり返さないようにバランスをとるのが難しい。
「よっ・・・と」
「食いもんに毒入れたりはしねえから、まあ安心しろ」
「・・・なにが安心しろだ?ムリ、てか、ここから出してよ」
「そりゃ無理だな。お前には与えられた役目がある」
「それはあんたの都合でしょ。あんた、何をしようとしてる訳?」
「聞いたら眠れなくなるから止めて置け。まあその時まで食べもん位は、お前の好きなもん食わせてやるよ。食いたい物があればいうんだな」
大嫌いな奴だけど、見た目は美麗だ。深い緑色の瞳なんかは、赤い髪と反対色だけど、とても神秘的だ。
だまっていればだけどね。
「あんた、やっぱり王族の手下なの?」
「だったらどうする?」
「・・・どうもしない。ただ、残念なだけ」
「アッハッハ、お前はそうやって、いつも気楽なもんだ」
「気楽ってなに?そんな訳ないじゃん。だいたい、この国の都合で無理やり呼び出されたのは私の方」
「運が悪かったって諦めるんだな。何もかも自分の思う様には行きゃしないもんだ」
そういうアスランテの珍しくまともに返して来た言葉に思わず顔を見つめてしまった。
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