第五章
第1話 牢の中です(怒)
痛い、なんか痛い、あちこち痛い、うーん痛い!
やっぱ痛い!
はっ!と目覚めると、冷たくて、ゴツゴツ凸凹した石の上に転がされていた。
身体中痛いわ!こんな所に転がすとわ!
あたた、首も痛い!・・・そうだ、キュッてされたんだった。よかった。まだ、生きてるよ。
えっ!、ナニ?首輪ついてる・・・犬かっ!?ジャラリと鉄の鎖が付いている。
首が難しいと思ったらゴツイ鉄の首輪ついてた。何事?
首に手をやろうとして、ズンズク鈍痛がする上に、右手が動かない事に気付いた。
右手首・・・ハイ、ご臨終・・・。
なんか、申し訳程度に添え木して白い布で巻いてあるけど、折れてるよねコレ?
先から見えている指先までも腫れあがってる。ぱんぱんだ、熱を持ってる・・・。
持ち上げてじーっと見る。普通なら身体も熱が出るレベルのはずだ。
まあ、骨折してこの程度で済んでるのは、『緑の巫女姫』だからだろう。
痛いけど、我慢できない程ではない。
もしかして、このままくっついてくれないかしら?
周りを見回すと、間違いなく岩で出来た牢の中だ。鉄格子がガッチリ填まっている。小さい戸口には錠前がぶら下がっていた。
他には牢は無く、岩に囲まれた一つだけの地下の岩牢のようだ。
右手を使わずに立ち上がり、牢の中を観察する。
なにはともあれ、リュックを背負ったままだし。ローブも着たままだ。
もしかして、エルフ印のこのリュックとローブは不浄の者には勝手に外したり出来ないのかな?
不浄の者=ロドリゴ=王族
ピロリロリーン
明かりは壁に付けられたランプがあり、それ程明るくはないけど、無いよりマシだ。
鉄格子の向こうにある狭い通路の突き当りにぼんやりと石の狭い階段が見える。
ベリン城で入れられていた所とは違う場所だ。
前に入れられた所は多くの囚人が入れられる複数の牢が並んでいたのだ。
だからと言って、ベリン城ではないとは言い切れないけど。
前に城の地下牢に入れられた時は食べ物も水もなく。壁に沁み出てくる水を舐めて凌いだ。
苔が口に入っても気にする余裕なかった。
三人が早く来てくれなかったら、マジ死ぬ所だった。
トラウマだわ~。思い出すのも嫌だったんだけど、でも今は前みたいにボッチじゃないから心の持ちようが違うな。
広さは八畳位で、ぼろい木の扉が付いたトイレがある。トイレ死守。
あとは何もない。嫌がらせの様に何もない。
一応、確認はしてみたけど、首の鉄輪は強い力で封印されていて、外れなかった。
鉄鎖は牢の格子に繋いであり、トイレに入るのには十分長さがある。良かった。
リュックを下して中から物が出せるか試して見る。
「水筒、おにぎり二個、痛み止めの薬一包。・・・あ、寝袋と枕」
大丈夫、全部出て来た。
寝袋を尻の下に敷いて、ほっとする。とりあえず『おにぎり』を食べた。
「うんめっ。モグモグ。皆どうしてるかな・・・心配してるだろうなぁ」
水をゴキュゴキュ飲んで、人心地ついた所で、痛み止めを飲んでおいた。
治癒しないようなら、自分で炎症を抑える張り薬でも作ろう。片手しか使えないので難しいかもしれない。
でも、ちょっと流石に疲れた。片付けて、リュックを背負い、一番部屋の奥の隅っこに寄り、寝袋に入った。
この寝袋、弾力があって身体の疲れを取る魔法が付与されている。きもちいい素敵な寝袋だ。
枕を敷いて、目を閉じた。
「おやすみ~」
瞼の向こうに、仲間の顔を思い出しながら、睡魔には勝てずに目を閉じた。
※ ※ ※
寝息が聞こえ始めて、暫く、
石の階段をヒタヒタ降りて来て牢の中を見て呆れている。
「でかいミノムシが居るじゃねえか・・・どんだけ図太いんだコイツ」
岩牢の奥に、膨らんだ寝袋が転がっている。
どうやらよく眠っているらしく、寝息まで聞こえて来る。
「せっかく餌を持って来てやったのに・・・」
トレイに載っているスープはまだ湯気が出ていた。
鍵を開け、持っていたトレイごと食料と水を手前に置き、一応手に掛けて持っていた毛布を牢の内側に入れてやった。また鍵をかけてから、ミノムシを眺める。
「俺も優しい事だぜ、あいつ本気で俺を殺しにかかってきたからな、クククッ」
牢と鍵に魔術を重ね掛けしてから階段を上る。
その口元はニヤニヤと笑っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。