第11話 灰色の魔導士
宝を手に入れた私達の所へ、暫くしてアスランテが約束通り私を追って来てくれた。
「ココ、ムーラン、無事でしたか。良かった」
「アスランテは大丈夫だった?」
「ええ、黒騎士は前回よりもかなり強い魔力を込めて作られていましたが、大丈夫でした。それに、ドワーフの魔術により、この部屋に辿り着くには聖なる魔力を持って居なければ入れない仕様です」
アスランテは考える様な表情をしながらそう言った。
「だから、ここまで追手が来ないんだ」
「逆に、戻りが困りますね、おそらく黒騎士達は大広間で待っているでしょう」
ムーランのいう通りだ。
「ここから魔法で街までひとっ飛びできないかなあ」
「そんな事が出来れば最初からしていますよ」
「うーんそうだよね。しかし、この刀ちょっと邪魔だな。鞘がない、剥き出しってのも・・・」
すると、刀の刃の部分が突然消えた。まるでライトセーバーみたいだ。
「ココ、それは・・・」
アスランテが目を瞠った。
「うん、これね、アスランテにとってのクレイヴ・ソリッシュみたいなもの。よし、これなら、簡単に腰のベルトに刺しておける。」
「それが、ここに隠されていたのですか?」
「うん、そう」
「ココはエルフやドワーフから色んな道具を貰っていますね」
アスランテが微笑んだ。
「ふふ、本当だね」
何かが導いてくれるように、助けがある。
「じゃあ、三人で、戦ってあの大広間を抜けるとしましょうか?」
ムーランが大したことではないように言った。
そうだ、黒騎士なんかより、それを操る者達を探し出して止めさなきゃならないんだ。
「よし、行こう!」
アスランテが先頭で走って行く。
そうして、大広間下の大階段まで戻ると、そこにはまるで整えられた軍隊の様に整列し、見下ろす黒騎士達が居た。
馬は消えていて、黒騎士だけだ。
アスランテとムーランは既に杖(じょう)と剣(つるぎ)を手にしている。
そのまま加速して、アスランテは跳躍し、黒騎士達の中に突っ込んでいった。
同じように、ムーランも跳躍する。
私の賢い蔓達も、二人とシンクロするように縦横無人に黒騎士を攻撃している。
ベルトにホールドしている私の刀の柄に手を伸ばした時だった。
私のすぐ傍で床に青い魔法陣が開き、飛び退(すさ)った。
派手な雷(いかづち)の演出もなく、静かに浮き出た青い陣の中に灰色のローブの人物が出現したのだ。
「あんた、何?黒騎士の親玉?」
「クククククッ」
灰色のローブの男は不気味な声で笑った。
こちらに気付いたアスランテとムーランが助けに来ようとしているけど、すごい数の黒騎士がどんどん湧いて出て来るのだ。
ローブの中は真っ黒で見えないけど、突然、シューシューとガスが抜ける様な妙な音が男の口からし始める。
「ん?」
私はその男に目が釘付けになった。
次に男が何をするのか分かったのだ。
「あ・・・」
男はシュウシュウと口から音を出しながら両手を口の方に持って行き、縦笛でも持つような動きをした。
「オ・オ・オ・オ・オ・・・」
口から棒の様な物が突き出てきて、それを両手でつかみ引きずり出す」
それは『魔導士の杖』だった。杖の一番太い部分には小さめの骸骨の顔が三つ付いている。
おどろおどろしい、気味の悪いデザインだ。
これを口から出す時のこの男の顔はそりゃあ見れたモノではない。
「ちょっと、アンタ、あたしがそれ見るの嫌いなの分かっててやってるよね」
「クククッ・・・アハハハハハハッ」
うしろに反り返って笑う男のローブはずり落ち、特徴的な真っ赤な髪が出現した。
この世界で、一番会いたくない大嫌いな奴だ。
そんで、こいつの杖の出し方が一番嫌い。
口から吐き出すんだから・・・。おえ、こっちまで吐きそうになる。
「―――――ロドリゴ、あんた、なにしに来たの?」
「これはつれないことをいう。なあ、エリザベス」
「アホか、来るな、帰れ!」
私の前には、赤い髪に深い緑の瞳をした、美貌の男が立っている。
私の知る限り、最凶の魔導師だ。ぞぞぞぞ~っサムイボたっちゃった。
腰の刀の柄に手をかけると引き抜く。同時に刃が現れて煌めいた。
人喰い蔓がロドリゴを襲い、間合いが開き、大階段を跳躍する。
そこに向けてロドリゴが容赦なく雷(いかづち)を落として来た。
足元の石の階段が崩れ落ちる。もっと上に跳ね上がるとそこにも雷を落とされる。
自分の足場は蔓を伸ばしてそこに飛び乗った。
「このクソが!」
蔓の槍をロドリゴに向けて落としまくる。
それを簡単にかいくぐって、自らの杖を振りかぶりる。あれで殴りとばすつもりだとピンときた。
凹られてたまるか!
前から気に入らなかったあの杖の骸骨の部分を刀を滑らせぶった切ってやった。
「「「ギョギャアアアアアアアアァ」」」
骸骨が叫びながら落下していった。ザマアミロ!
「このドブスチビ・・・」
ロドリゴの首を狙って刀を反らしながら、蔓を動かす。
「ぐはっ」
私の顔に温かい物が散った。あいつの口から血が伝って落ちた。蔓に身体を貫かれたのだ。
やった!と思った瞬間、刀を掴んでいる私の手首を剛力で掴み捻り込んだ。
鈍い嫌な音がして、手首が熱くなり、刀が落ちる・・・。
間近で見る緑の瞳が私を覗き込み、ニヤリと笑った。
「お返しだ・・・」
「「ココ!!!」」
思い切り腹筋を使いしこたま腹を蹴り上げてやったが、その直後には両手で首を掴まれて、キュッてなった。
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