第9話 とり残された地
エルフ村で聞いた所によると、このベリン国では、他にもとり残された地がたくさん残っているのだという話だった。エルフの村だけでなく、人族以外の種族は差別を受けて条件の悪い地においやられているらしい。
だから、今住んでいるこの地が条件が悪くても、そこで暮らすしかなかったのだ。
もし、他に移るとしても、良い条件の場所はなかなか無いと思ったから。
そうだろう、だってこの国の上の方にいるタヌキジジイ共は自分の事しか考えていない。
王様も、その周りの人間もみんなそう。国の民が大切だから国を守るのじゃなくて、自分の地位と生活を守るのに必要だから、自分達の都合で異世界から巫女姫を勝手に召喚して働かせる。使い捨ての駒だ。
まあ、私もバカじゃないから、あの三賢人は向こう側の人間じゃないのは知っている。
でなければ、あの大変な旅に付き合って国を立て直す偉業をやってのけたりはしないはずだから・・・。
でもね、それならばそれで、言いたい事はたくさんあった。それを言うには、私は外の世界から来た者で関係ないと思う所もあったし。そして、それを言ってしまえば、関係ないでは済まなくなるからだ。
七年間考えて、結局何も言わずに元の世界に帰った。
なんていうか、心にモヤモヤが残ったままだった。
「ココ様、これはエルフ村の皆からのお礼です。黙ってお納めくだされ」
「ん、これなあに?」
エルフ村を出る前の日の夜、村長さんに渡された物がある。
深い緑色の布を畳んだ物と、古いリュックだ。
「これは、この村に伝わるエルフのローブと、#たくさん荷物を入れられる__・__#リュックです」
「わーありがとう。丁度こんな薄手のローブ欲しかったんだよ。リュックも大きさが丁度いいね。今持っているリュックちょっと小さかったから嬉しい」
「ほっほっほっ。それは良かった。ローブも、これを着ていると疲れにくいという特別なローブです」
「そんな良い物貰ってもいいの?」
「勿論ですとも。では、受け取っていただけるということですな」
「うん、ありがとう。すごく嬉しい」
「失くさない様に、ココさま専用という事で魔法をかけておきますぞ」
長老はどっから取り出したのか、いかにもなカッコイイ杖を取り出し、ローブとリュックをチョンチョンと杖で触り、私の頭も杖で触った。
「さあ、これでローブやリュックを失くしたり、盗まれたりする心配はありませんぞ。呼べば飛んで来ます」
「長老さんありがとう。そんなすごい魔法があるんだね。これで安心して旅が出来るよ」
「いえいえ、貴方様の旅の安全を心より祈っております」
と、そんな会話あった。
エルフ村を出る日、村の皆が見送ってくれた。
ソルトやルンだけじゃなくて、子供達も#お兄ちゃん、お兄ちゃん__・__#と言って慕ってくれたし。
村ではとても楽しく過ごせた。心が温かくなるような場所だった。
このエルフのローブと古いリュックがどんなにすごい物なのか後で直ぐに分かる事になる。
エルフのローブを着ていると、身体能力がとんでもなく上がり、疲れ知らずだった。
だから、一日に移動する距離は倍どころか三倍。
おまけに貰ったリュックは幾らでも物が入るし、膨らまない。
そして背負っている感覚さえ持たない程に軽かった。
そんな貴重な物を私にくれたエルフ村に感謝した。
感謝して、あの村の人達の暮らしが豊かになりますように、幸せになりますようにと心より願った。
※ ※ ※
後に、あのエルフ村がとても栄えて暮らしも豊かになる事をこの時私は知らなかった。
人々は『緑の姫巫女の祝福を貰った村』と呼んだそうだ。
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