第10話 三賢人 

 魔道師のロドリゴが聖騎士のアスランテを追いかけて旅に出るというので、私、神官のムーランも仕方なくロドリゴと一緒に旅に出た。


 10年前に、国に蔓延する瘴気を一応浄化し終えた。その後、三賢人と国の民から呼ばれる私達三人は、隠居生活を送っていた。


 国から多くの褒美を貰い、何もしなくても死ぬまで暮らして行けるだけの物は貰った。だが、ダラダラと暮らす事は性に合わず、私とロドリゴは民からの魔物の討伐依頼等を無償で請け負っていた。


 しかし、アスランテは10年前に突然『緑の巫女姫』がこの世界から消えてからというもの。


 何もせず、ただ生きているだけの様な状態だったのだ。


 それが、この度、どうやら『緑の巫女姫』がこの国に帰ってきたのではないのかと思う予兆が感じられた矢先、姿をくらましてしまったのだ。


 死んだような生活を送っていたのに、行動は早かった。


 このベリン国は、人族の支配する国だ。少数の王族と貴族に牛耳られている。


 それは、王族・貴族が魔力を持っているからで、庶民ではとてもその力に太刀打ちできなかったからだ。


 それ以外の他種族は下位種だと決めつけられ、団結しない様に少数に分けて、僻地に住まわされるという歴史を持っていた。


 もともとは王族にあたる一族の祖先は異能者を多く輩出する家系だったようだ。


 異能というのは、呪術や召喚等に長けていたらしく、この国に瘴気が溜まる様になったのも、その呪術の餌食になった者の恨みつらみが重なりそうなったのだと言われているが、本当の事は分からない。


 実際、我ら三人も国の要である貴族の中の強い魔力を持つ者だが、自分達の一族を楯にとられ、王族のいう事を聞かなければ一族に呪いをかけると言われてしかたなく『緑の巫女姫』のお守りと浄化の旅に出たのだ。


 但し、仕事をこなせば一族と、当人には褒美を取らせるというものだった。何というかクソである。


 それ以外のこの国に暮らす別の種族は肩身の狭い生活を余儀なくされていた。


 この国から逃げ出そうにも強力な結界の為に、王族の許可なくばベリン国から出る事も出来ないのだ。


 この結界に関しても結構黒い話が貴族の間では流れている。



 まあ、そんな中、私達にしても、国の瘴気の状態は何とかしたい、差し迫った事案だった。


 だから自分達が瘴気を滅する事に依存は無かったのだ。






         ※         ※         ※





 とある山の麓の村で、私とロドリゴはアスランテを見つけた。白くなっていた。


 いや、元々頭は純白の髪をしているのだが、『緑の巫女姫』を見つけられず、おまけに見失ってしまいエリザベスが向かった方向すらも分からなくなり、動けなくなっていた。屍状態だ。


「な、だから追いかけて来て良かっただろ」


「・・・そうですね。貴方のいう事もたまには聞くものですね」


 村の酒場でエールを飲みながら三人でテーブルを囲んでいたが、アスランテは無言で飲んでいる。


「ギルド登録も確認してみたけど。エリザベスの登録は無かったぞ」


「ですが、ちょっと気になる話も聞きましたね」


「もしかして、あの盗賊崩れの一団を捕まえた子供の話か」


「ええ、盗賊たちは意識が戻った後に『人喰い蔓』に襲われたのだと言ったそうなのです」


「うーん『人喰い蔓』ねえ。それって、いかにもエリザベスが使いそうな感じはあるよな」


「本当の話でしたら、彼女で間違いないと思うのですが・・・」


「ん?何が気になるんだ?」


「その子供は髪の色も目の色も聞いた所、全く違います。それに本物のエリザベスでしたら、33才の筈です。とても子供で登録など無理でしょう」


「だけどなあ、もしかしたら魔力のお陰であれから年をとってないかみしれないじゃないか」


「いいえ、彼女の生まれ育った世界では、毎年、年を重ねると言っていました。それに、登録者の子供は12才で冒険者登録をしたそうですが、ギルド職員の話だともっと幼く見えたそうです。おまけに男児です」


「男なのか・・・そりゃー流石に無理があるよなあ」


「ええ、そう思います」


 そこまでずっとだまってエールを飲んでいたアスランテがポツリと言った。


「それ、彼女だ」


「ええ?なんでだよ」


「彼女だと思う・・・明日ギルドに、登録されたホログラム、確認する」


「そうですか、貴方がそうしたいのなら、その様にすれば良いです。今日は休みましょう」


「えー全然意味わからんわ。まあ、アスランテが復活したからいいか~」


 アスランテが白い屍から復活したので、明日の予定が出来た。


 だが、翌日、突然エルフ村の方向から『緑の巫女姫』の浄化の力を感じ、三人で駆けつける事になる。


 そして、訪れたエルフ村は、美しい緑の村だった。








 


 

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