第7話 エルフ村の結界

 この世界、地図は貴重品だ。とても高価なので買うのはちょっと考える。


 ま、お金に余裕があれば気にする事もないのかもしれないけど、先の見えない旅をしている私は慎重になる。


 そういう時には、地方のギルドに必ず置いてあるという、簡易地図を貰えば役に立つ。


 だってタダだ。タダ!。ありがとうタダ。


 まあ、観光地の簡易マップみたいな感じかな。




 人が一日に歩ける距離ってどのくらいのものかなと思うんだけど、日本では江戸時代、だいたい夜明けから日が暮れるまで歩いて、10時間として、男の人で40キロ位が限度だったみたいだ。道路事情や履物も今と違って良くないしね。


 それでも40キロ歩くってすごくね?江戸から京都までは歩いて15日位だったらしい。


 まあ、そういうの考えながら歩いて、道々果物を採ったり持っていた干し肉かじったりしながら、多分100キロ位かな二日後には、エルフ村にいた。何気にチート能力と私の健脚のおかげさまである。


 幸い、人攫いや、強盗にも会わなかった。と言うのも、左の道はエルフ村のある鄙びた街道で、大きな街に辿り着くにはかなりの大回りになるので、人通りが無いのだ。だから強盗も用がないのだと気付いた。


 エルフ村の中に入る事が出来たのは、偶然だった。


 今から10年前には、私はこの国の瘴気を緑の魔力で浄化して周っていたわけだが。


 しらみつぶしに全てを周る事は無理なので、国に散らばる神殿分室を周り、主に瘴気で枯れた場所を、緑の魔力で浄化していた。


 だけど、人族では無いエルフ族の住む地は取り残されたままで、浄化されなかった様だ。

 

 おまけに御丁寧に、結界まで張られているので、本当に取り残された地になって。村の中も周囲も枯れ地になっていた。


 「わー何で、この辺ぜんぶ、茶色なんだろ?」


 エルフ村の近くに差しかかると、そんな感じで自然も荒れ果ててている。


 たまたま食料を探して歩いていたエルフの幼い兄妹と出会った。


 出会ったっつうか、妹が大泣きしているのを兄ちゃんが持て余して困り果てている所に遭遇した。


「どーしたの?」


 エルフの兄妹は一瞬驚いたけど、私が子供に見えたらしく、警戒しなかった。


 妹はそのまま泣き続けたし、兄ちゃんの方もどうしようかと迷っていた。


「・・・お腹が空いて、果物とか探したけど、全部獣に食べられてて、種だけが転がってるから、妹が泣くんだ・・・」


 なるほど。地面には種が散らばっている。


「種があれば、実にしてあげられるけど、エルフの結界の中じゃないと出来ないんだよね―」


「えっ?本当」


 グズグズと泣いていた妹が、突然泣くのをやめた。


「本当だよ。嘘だったら直ぐに追い出せばいいし」


「う、うん」


 兄の方は10才よりも下そうだし、妹は5才位かな。痩せている。


 そう、結界!結界の中なら、緑の魔力を使ってもバレない。しかもエルフの結界なら強力だろう。


 それに、人族も仲が良くないからと言って、自分達の住む場所だけ浄化させるなんて、嫌らしいにも程がある。


 同じ国に住んでる者同士じゃないか。なんかそういうの腹立つー。


「心配ならさ、大人のエルフを連れて来たらいいよ」


 ニッコリ。天使の笑み。ニッコリ。


 二人の兄妹は、私の新しい技、『天使の笑み』(仮)に惑わされた。チャララーン。



「お兄ちゃん優しそう。すごくかわいいお兄ちゃんだ―」


 と、妹の方が言った。


 お兄ちゃんかっ!やはりお兄ちゃんに見えるらしい。


「じゃあ、ついて来てくれる?コッソリ入って試してくれる?」


「うん、いいよ」


 にこにこ、にっこり。


 人スレしていない、エルフの兄妹は騙されやすそうだ。心配。←お前が言うな!


 そうして、結界内に入る時に少し抵抗を感じたものの、招かれて入る事が出来た。


 しかし、入ったエルフの結界内は、思ったよりもっと悲惨な状況だった。


 畑らしき耕した土にも、ほとんど野菜は生えていないし、茶色だ。みな茶色・・・。


「茶色だー」


 スゲーなおい、こりゃいかんだろ。さあ、『緑の巫女姫』のターンだ。


 

 


 


 

 

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