第4話 冒険者登録してみた

 とりあえず冒険者登録をしに冒険者ギルドに行ってみた。場所はおじさんに教えて貰った。


「ココは可愛いから、人攫いに攫われない様に気を付けるんだぞ。まあ、獣も倒す魔力持ちなんだから大丈夫だとは思うが、自分の欲の為なら他人を傷つけても平気な奴、人のモノは自分のモノだと思っている奴は案外多いんだからな」


「うん、わかった」


 ほんとにそうだ。でもそういう悪い奴は私の世界にも沢山いた。


 しかし、おじさんが心配する位、人さらいに会う程、今の姿が可愛いんだなと逆に感心した。今までそんな心配された事無いわ。逆に新鮮だ。


 田舎にしては、ダンジョンを三つも抱えているだけの事はあり、ギルドは大きな建物で、対応も親切だった。


 何ていうの?ハイテク?みたいな・・・。すごいよね、手を翳すだけで簡単登録できるなんて。


 この国では、登録時の冒険者ランクは魔力の強さで決まる。


 私は持っているチート能力で、魔力を弱くして魔道具に感知させた。


 最低ランクはFランクだが、私の登録ランクはCランクとなっていた。うん、丁度いい感じ。


「ココくんは、その年でCランクの冒険者になるなんて、すごいなあ、このギルドでは最年少Cランク冒険者だよ」


 ギルドの係りのおじさんが褒めてくれた。申請時の年齢は自己申告で12才にした。この国での成人は15才だ。


 こういうのは、全部適当に設定しておいた方が、今後のためだろう。


 うーん、Dランク位にしておいた方が目立たなかったかな。

 

 冒険者登録はご家庭の都合ってものを鑑みて、個人で登録制になっている。10才から登録出来て、親の許可は要らない。


 だいたい、冒険者になるのは、貴族の次男以下で領地が貰えない立場の男子か、同じ様に貴族出身でも訳ありの女性が多いらしい。ようは魔力を持っていないと冒険者になってもダンジョンの攻略等は難しいのだ。


 でなければ、貴族の血がどこかで混ざった魔力を持つ平民だ。もちろん全く魔力を持っていない庶民の登録者もいるけど、そういう人達は生活の為に登録していて、萬年Fランクで薬草採り位しか仕事がない。安い仕事なのに、危ない獣や、魔物がいるかもしれない山に入って薬草を採るのはリスクが高いが背に腹は代えられないのだ。




 ランク鑑定の魔道具に手を翳すと指紋が登録される。指紋登録か血液登録で、以前は血液登録しかなかったみたいだけど、城の魔道師がこの魔道具を作ってからは手を翳すだけで登録出来る様になったそうだ。


 人によっては、針で指先を突くというのを嫌がる者もいる訳で、指紋認証式の魔道具が開発されたらしい。そもそも、この世界に指紋がそれぞれに違うという認識もなかった筈だ。


「ん?」


 ふと、何かが頭に浮かびかけて消えた。何か重要な事を思い出しかけて消えた感じだ。まあ、重要な事ならばどちらにしても思い出すだろうし、そうでないならそんな大切な事でもないのだろう。


 認証登録が終わると、レアメタルカードが魔道具から出てきた。それには現在の姿のホログラムの上半身画像と冒険者ランク、自己申請による名前、指紋のデータが入っている。大切なのはこのカードはこの国のどこでも使える身分証明となるし、どこのギルドでのお金の出し入れも出来る。


 違う名前で別登録することは出来ないシステムの様だ。


 まあさ、前回は冒険者登録なんてのは、やった事は無いし身バレの問題はないだろう。しかも外見も変えてある。


 何より、この世界で以前七年暮らしていたのだから、知識もそれなりにあるので心に余裕がある。


 とにかく、精霊を探して元の世界に戻る事と、もう一つ。


 二度とこの世界に引っ張り込まれない様にする方法を探すつもりだ。キチク三賢人には気をつけなければならない。あいつらジジイの癖に、外見は変わらずにピンシャンしてるらしい。


 ピンピンコロリ病なんて、ないもんかね?三匹とも罹ってシマエバイイノニ。


 悪い事を考えながらギルドから出て歩いて歩く、『ふっふっふっ』と怪しい笑いを漏らしていると。


 突然誰かに道を塞がれた。


 いつの間にか路地を一本間違えてしまっていたらしく、人通りのない淋しい場所を歩いていた様だ。


「かわいいぼうや、何処に一人でいくのかな?おじさん達と美味しい物を食べにいかないかにゃ?」


 まるで宿屋のおじさんが預言者の様に思える程、陳腐な誘い文句で汚い恰好の一団が目の前にいたのだった。


「えーっと、断る」


 もう、これ一択だろう。


「こんな淋しい場所を一人で歩いたらダメだってお母さんに言われなかったのにゃー?」


 何がにゃーだ・・・きもっ。


 私はポケットに手を突っ込んで植物の種を一粒取り出した。


「おじさん、良い物をあげようか?」


 可愛い笑みを浮かべてにっこり笑うと、悪いおじさんは、


「おおっ!きゃわいいにゃー。こりゃー高く売れそうだにゃ」


 とか言っている。ホクホクした顔だ。


 そのまま掌に乗せた種をおじさん達に見せる


「「「「「ん?」」」」」


 と言った。


 突然掌の種から太い幹の様な蔓が伸びて地面に立ち上がると、見上げる程に天に伸びて何本もの蔓を伸ばしておじさん達に巻き付きその身体を振り回し始めた。


「ギャーッ、ダズケデグデーッ」


「降ろしてくでー人食い蔓だあーっ」


「ウギョーッ」


 阿鼻叫喚だ。


 振り回され、皆、地面に叩きつけられ伸びてしまった。


「蔓さん戻ってくださーい」


 私の声で、煙とともにシュポンと一粒の種に戻った種がコロリと地面に転がった。


 拾ってまたポケットに入れる。


「蔓さんありがとう。助かったよ」


 お礼に私の魔力を種さんに与えてあげた。もっと強い蔓になるね。ウフ。


 この蔓は、山で見つけた植物系の魔物だ。退治して、種にして持っている。


 それから、この悪人の後始末をしなければならないので、仕方なくギルドに戻り、被害届を出し、のびている人攫いを役人に捕まえてもらった。


 今までも色々と悪事を働いていた一団らしく、余罪は沢山ありそうだった。手足の一本位は皆折れている様子だったし、強制労働所に送られてもあまり役に立ちそうになかったけど、仕方ないよね。


 この国では、犯罪者の怪我等は自然治癒しか認められていない。ギルドの職員から、後日メタルカードに報奨金が送られると聞いた。





      ※      ※      ※






 魔道師のロドリゴは、神官のムーランの屋敷に駆け込んだ。警備の者達は開けて通してしまう。


「オイ、ムーラン!お前、感じたよな?」


「何です、ロドリゴ、相変わらず下品ですよ」


 白に金の刺繍が凝らされた美しい神官服で、妖精の様だと皆に称えられる女性的な美貌の男は嫌そうな表情で振り向いた。






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