第2話 草の寝床亭
私が今働いているのは、草の寝床亭という宿屋だ。ここで、主に力仕事をしている。
薪割りとか、荷物運びとか、買い出しもしているのだ。
えっかよわい女の子なのに何故?そう、それにはワケがあった。
前回の召喚時は城の大聖堂に召喚されたけど、今回はなぜだか山の中だった。
深い山の中、獣はいたけど問題なかった。
森に落ちて直ぐに試したら『緑の巫女姫』の力が使えたんだな。この地に落ちて直ぐに魔力が身体に満ちているのを感じたから、『むっ!使える』と思ったのだ。
まあ、見慣れない植物や動物を見た時点で異世界だと思った。空気が違うのよ、魔力含んでいるからね。もしかして、王城の魔術師が何か失敗したかどうかしたんじゃないかなと思う。でもそれは私には好都合だった。さっさと逃げよう。そして、精霊に会いたい。どうやったら会えるんだろうか?
前回落ちた時は、黒目黒髪でどう見ても異世界人な私だったけど、今回は違うんだな。
顔は凹凸が淋しいけど、髪色と瞳の色が違うだけで身体が小さいから一見、この世界の子供にしか見えない。
擬態って奴ヨ!えっへん。
異世界に飛ばされるという、人生何が起こるか分からない目に会った事で、やってみたい事は何でもやってみようと思った私は、帰宅部オタク系の人はやめた。
今の髪はアッシュピンクに染めてフワフワショートにしてあり、目はベイビーブルーの光彩入りの15ミリのカラコンを入れて、身だしなみにも気を配り、リア充といわれる生活を試みた。
ほんとカラコンの15ミリ入れると別人だよね。クリクリうるうるの瞳になる。もともと二重だったけどどっちかというと三白眼ぽい光彩部分の小さめな目だったから、全然イメージが変わった。
よく、魔道師のロドリゴには
「睨んでんのかゴラァ」
と因縁付けられていたのを思い出し、ムッとする。
チート能力のおかげなのか、カラコンも染めた毛もそのままで大丈夫の様だ。もはや通常装備だ。
頭がプリン状態になったり、目が乾くということもなく、非常に過ごしやっすい。
てか、どういうマジック?
なにせ、オタク系と言えば運動系の事をせずにひたすら家に籠って携帯ゲームや薄い本ばかりが好きで、行くといえば本屋かコミケでどうにも動かないもんだからブーブー太って困るわけよ。でも誰に見せるわけでもないんだからいいかなんて、甘い甘い。人に厳しく自分には甘い。
だから、身体中弛んでて、めっちゃキツかったから、いつ何時サバイバルになっても対応出来る様に、この一年鍛えまくったんだ。しっかしまさか本当に、また召喚されるとはね。
それでよ、なんで今宿屋で働いているかと言うと、山を彷徨って麓まで降りて来たのはいいけど腹ペコで動けなくなった。獲物は捕まえて血抜きして私の植物を思いのままに動かす魔力を使ってもって降りて来たのはいいけど、火を熾したりなんてもう余力もなくてへばっていたら、草の寝床亭の御主人に拾われたってワケ。
「おっ、坊主どうした、具合でも悪いのか?おっその獲物はジャンゴじゃないか!・・・」
そう、ジャンゴ。それは美味しい獣。猪とウシと鶏の肉を一頭で楽しめる様な獣。部位によって肉質が違い、それぞれが旨い。じるっ。とても狂暴で、高級な獣。
「おっ、おじさん、これあげるから、ご、ご飯、食べさせてよ」
恥も外聞もなく、おじさんの脚を掴んでそう言った。
「なんだ、えらく飢えてるな。お前魔力持ちなんだな、スゲーなこんなに小さいのにジャンゴ狩れるなんて。いいぞ、これくれるなら二月はタダでうちの宿に泊めてやるし、飯も食わせてやる」
おじさんは蔦で縛ってあるジャンゴを軽々と引きずりながら、私を担いで草の寝床亭に連れて行ってくれたのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。