体質系?異世界召喚者、また召喚され、怒る

吉野屋桜子

第一章

第1話 プロローグ 

 今回が二度目だからそんなに驚かなかったって言ったら嘘になる。


 めっちゃ驚いたわ。驚かない訳ないわ。


 もう二度と御免だと思ったのに、また召喚された。しかも今度も同じ国だった。


 召喚した奴、タヒね、タヒんじまえ。そう思ったね。


 以前召喚された時に酷い目にあったから、もうこの世界では絶対誰も信じないって決めてる。


 なあにが巫女姫だよ、ふざけんな。私がなんでこの世界を救わなきゃならないの?


 この国のやつらは嘘ばかり言って、自分達に都合の良い事しか言わないのだ。もうだまされるもんか!




 高校2年生の春、突然異世界に召喚された私は途方にくれた。その世界で生きて行くためには、召喚した国のお偉いさん達の言いなりになって動くしかなかったのだ。


 そうしなければ『役立たずは殺す。お前が死んだら新しく別の巫女姫を召喚すればよい』等と小突き回されて脅されたら仕方ないだろう。そうやって7年かけて、望まれるように(クソ)ベリン国の瘴気を緑化の力で滅する旅をしたのだ。


 地球で現代育ちの帰宅部オタクのやわな身体にムチ打って、血反吐を吐きながらの旅だった事は間違いない。




 異世界召喚された私には、この世界の瘴気を消す力があった。チート能力ってやつ。


 そんで、『緑の巫女姫』という笑っちゃう二つ名が付けられていた。


 一応、私を守る為の聖騎士と魔道師、神官の3人が護衛に付けられたが。実情は逃げ出さない為の見張り役で、私は飯炊き女のごとき扱いだった。あのクソ共、次にもしも会う時は絶対仕返ししてやる。


 ベリン国で瘴気を滅する旅というのは、各地に建てられている神殿分室へと赴き、そこで緑の巫女の力と言われる植物を生やす魔法を広域にかけるというものだった。


 瘴気とは、魔物が発する毒素の様な物でそれを消す力を私は持っていた。


  まあ、私以外の3人はそれぞれの持って居る魔力で魔物を倒せたので、私が広域魔法をかける間、魔物と戦いながら私を守るというお役目だったわけだ。


 旅には魔物の討伐も含まれるのだが、私の緑の魔力はかなり強く、枯れた地を浄化して様々な植物を生き返らせて、その植物の持つ浄化の力を借りるというものだった。


 どうやら私の力は今まで召喚した巫女姫の中でも群を抜いていた様だ。20年かかると言われていたのに七年で浄化作業が終わったのだ。いやあ良かったわ!って良い訳あるか!


 貴重な青春を瘴気の掃除をする為に捧げさせられたんだから。


 瘴気で魔物の森以外の樹木や野菜等の植物が枯れ果てて、人が餓死するという事があちらこちらで起っていた。薬草も取れないので薬も作れない状況だった。


 だからこの国の人々には私の力はとても有難がられた。


 

 その後、いよいよ凱旋するぞと言う時に私は元の世界に戻ったのだ。これは最初から私を助けてくれていた精霊のお陰だ。見張りの三人から見つからない様に、ずっと支えてくれた精霊が私を元の世界に戻してくれた。


 精霊と別れる事だけが辛かった。泣いた。


 それで、帰ってびっくりした事は、飛ばされた7年前に戻っていたこと。23歳から16歳に戻るって感動。


 何気に7年経過して、最初におじさんだと思った奴らと同じ位の年齢の見た目になっていた事へのショックったらないわ~。ベリン国では魔力が強い者は、20歳を越えたらあまり年を取らないってんだから納得出来んわ。


 もうさ、瘴気の浄化の終わり辺りでは、口の悪い魔道師(ソーサラー)のロドリゴにはババア呼ばわりされて切れそうだったし、七年経っても不愛想で仏頂面の聖騎士(パラディン)のアスランテには辟易していたし、神官(プリーステス)のムーランにはしごきまくられてアマゾネス化してた私は、いつ奴の首を絞めようかと画策してたわけよ。


 


 

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