第39話
「大人しく従え! 刺激するんじゃないぞ! 見た目は可憐だが、この少女がいかれてるのは事実なんだ!」
あたしの腕の中で、おじさんが叫ぶ。
「それに私は、街一番の出資者だ! 私が今までにいくら出資したか! 君たちはどうやっても私を助ける義務がある!!」
「どうやら、ライアンとレーニスの言っていることは、本当のようね」、リーススは飽きれて物も言えない、という顔をしながら言った。「誰がいかれてるですって? 口には気を付けた方がいい立場じゃないかしら?」
おじさんは開きかけの口を閉じ、兵士たちはざわざわと話し合いを始める。そのあとでこちらに叫んだ。
「あのバケモノは、人にとって重大な脅威である。この場限りでやすやす返答できるものではない」
ライアンは盛大で長い溜め息を、体全体を使うようにして吐き出してみせた。
「いいか、よく聞け。まずはコルロルをこの場に連れてくるんだ。時間がない。急いだ方がいい」
兵士はなぜ?というように、眉をひそめる。ライアンはもったいぶった動きで、ゆっくりあたしたちの前を歩きながら、おじさんの荷物から飛び出している縄を手に取った。
「コルロルをあの街に運ぶ道のりで、俺は軍の荷物に爆弾があるのを見つけた。いざとなったら使う予定だったんだろう? そして俺とコルロルの目的は、レーニスを助けることだった。しかし助けたとしても、逃げるのは難しいかもしれない。俺はそう考えた」
「ま、まさか……軍の爆弾を盗んだのか?」、話の先を察した兵士は、驚きをその顔に浮かべる。
「手癖が悪いもんでね」、ライアンは肩をすくめて答えた。「それで脅せば、逃げる時間を稼げるんじゃないかと思ってね。爆弾はあの街に隠してきた。時計の付いた時限式のやつを」
兵士はみるみるうろたえはじめ、「時限式の……」「一番威力があるやつだ」「大変なことになるぞ」とにわかに騒ぎだす。
そんな兵士たちへ、ライアンは腕時計を確認してから、とどめのように告げた。「あと1時間で、ドカン、だ」
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