第12話 5月22日

ひと通りの春を逃した。


唯一つかんだ春は窓から見た散っていく桜だけ。

5月病でさえもこのまま気づかずに通り過ぎそうだ。

東京の最近の気温は28度にもなる日が出てきていて

本当に春だけ一方的に無視してしまった気分・・・。


「日差しも香りも夏。」


春一番の風、マフラーを全て洗濯できる日、

ピクニック、お花見、桜風味のお菓子・・・

お菓子については春関係なく買ってしまうけれど。

特に桜餅が好きだ。


ずっと家に籠っているものだから衣替えのタイミングも分からなくて

25度を4日間連続で更新した日に思い切って取り掛かった。

なにせ服も多い。

それに、暑い日が続くとはいえ夏本番にはまだ早い。肌寒い日もある。

長袖全てを撤退させるわけにもいかないなどと頭も使う。

タートルネックや厚めのセーターなどは仕舞った。

毛布なども洗濯しては干してを繰り返し何も食べずに気づけば3時だ。


「朝7時からやってもうこんな時間?」


そりゃお腹も空く。

外は太陽が高い位置に昇っていて、歩いている人は半袖が多い。

中には日傘をしている人やタオルで汗をぬぐっている人もいる。

確かに3回ほど洗濯をしたが、毛布まで完璧に乾いているほど暑い。

今から外に出てコンビニに行くのは避けたい。

コンビニもたまに行くと楽しいし家で作れないものもあるからいいのだけど。


「帰って来てまた洗濯物が増えるのもなんだか・・・。」


そういえば昨日母からいろいろと届いた。

今の状況を心配して、足りないものや私の好きなものを送ってくれる。

その中に菜の花を入れてくれていたのを思い出した。

菜の花と言えば実家にいた時に春になると食卓によく出てきていた。

大人の味だからその良さに気づくまで随分かかったけど

今では春のお楽しみの1つだ。

東京ではなかなか売ってないからとても嬉しかった。


春を見送ったということで、菜の花を食べよう。


・菜の花の和え物

鍋に多めの水を入れ、塩をふって沸騰させる。

沸騰したら菜の花をゆでる。

茹で過ぎると触感が無くなるので注意。

茹で上がったら冷水にさらし、良く冷えてから5㎝幅に切る。

ボウルに切った菜の花、塩、ごま油、ツナ缶を入れて混ぜる。


暑い日は日差しが綺麗に入るから、透明なガラスのお皿にしよう。

冷蔵庫で冷やしてある水に氷を追加して。

窓を半分開けて暖かい風を受けながら疲れて熱くなった体を冷やす。

本当だったらビールかハイボールかレモンサワーだんだけどな。


「暑・・・。」


この感じだと、長袖もすぐ同じように洗濯パーティしそうだな。

季節を逃すも、季節を味わうのも自分次第。



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