第2話 5月3日
熱いお湯でゆっくり入れた緑茶を飲みながら
昨日の出来事について考えていた。
昨日に引き続き気温が高く、夜になった今でも窓を開けて
夜風を感じながら湯気が揺れるのを見守る。
「分からなかったな・・・」
そう、昨日例の男性と待ち合わせした。
彼の方が早く着いたので、涼しいところで待っていてと伝えて。
身長が高いと聞いていたので詳しく場所をきく事もなかった。
声と文章でしか会話をしたことのない彼。
好意を持ってくれていることは薄々感じていた。
彼は言っていた。
会ってから考えればいい。返事は急がないし、待ってる。
「・・・分からなかったなぁー」
待ち合わせをして呼んでいた名前で呼び
5月にしては日差しが強く痛いくらいの気温の中二人並んで散歩をした。
付き合っているわけでもないから触れることもなく、
だからといって距離を開けすぎることもなく、
不思議な間を保ちながら話した。
印象は、いいひと、だった。
でも、好きな人、ではなかった。
だけど、嫌い、でもなかった。
彼が帰るのを見送った後、考えた末に送った文章。
「正直分かりませんでした。でも嫌いでもなかったです。今すぐ答えは出ないからもう少し時間をくれませんか」
一番正直な気持ちを言ったつもりだけれど、どこかで後悔と罪悪感がある。
時間をくれという事は、もう少し苦しんでねってことになるだろうか。
ひどいことを言ったもんだ。
それでも彼はこう返してきた。
大丈夫。気持ちは変わらないし、こんな男の為に考えてくれてありがとう。
「違うんだよー私はずるいだけなんだよぉ」
熱々に入れたはずのお茶は手元を温めるだけの道具になっていて
湯気は遊ばなくなっていた。
考えれば考えるほど自分の気持ちは分からない。
分からないのに待ってくれと言ってしまった。
どうせ傷つくのが怖いんだろう。そうやって生きてきたんだから。
もう夜遅い。
夜風もほどほどにゆっくりお茶を飲もう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます