1-11

簡単に話し終えるころには港の入り口が目に入っていた。やはりパトカーが常駐している。

『やっぱり』

 はー、と感嘆の吐息。それが答え合わせだった。

「ドローンの目撃情報があるんだな」

『かもしれませんね。っていうかそんなおしゃべりな店員さんどこに居ます?作業員のほう全然喋ってくれないんですけど』

「口が堅いな。ずぶずぶだな」

『どうでしょう?でもひったくりですか、そっちの方実は聞いてないんですよ』

「聞いてない?」

『警察にも届け出出してないみたいですね。初耳』

「……つまり、隠しておかなければならない理由があるってことか」

『恥ずかしいから出さないにしては被害が多すぎますよ』

 確かに二人以上は襲われているように話していた。となれば、黙ってなければならない理由があるはずだ。

『電気使用量の視点は無かったです。ということでその食堂に行きますから名前を言ってください。そしたらさっさと家に帰ってくださいね。中華料理屋の方はこっちでどうにかしますから、さっさと帰りましょう!』

 本日三度目の警告だった。今度は流石に簡単に受け入れた。

 実行犯でなければ逮捕できず、下手に建物に立ち入れば不法侵入になる。金枝さんの防犯に役立つだろうかという目的は果たされた。

 港の方を見ると、パトカーの台数が増えていた。専門家が居るのだから一般人は静かに暮らすべきだ。

「……わかった」

『本当ですか?』

「ああ」

『私に誓って?』

「別の意味混ざってないか?」

『冗談ですよ。先輩なら大丈夫だと信頼しているんで』

「信頼は大事だな。裏切らないようにするよ」

『ご協力ありがとうございます!それでは失礼』

 電話が切れた。腕を下ろす。さあ帰ろう。

「あの」

「うわびっくりした!」

 ぎょっとして振り向く。そこにはさっきの少女が居た。白い帽子を被り、左手にトランク、右手に地図を持っている。手に持った地図と俺を見比べている。どうしてこんなところまで追ってきたんだ。

「ど、どうしたんだ」

 思ったことをそのまま言うと、相手は遅れて俺の驚愕に気づいた。

「すみません驚かせてしまって」

「あ、いや、こっちこそすまない」

 取り繕って背を伸ばす。

「で、どうしました」

「……そうですね」

 右手の地図をこちらに差し出す。港のと書かれた文字を右回り九十度横にしたTが書かれ、線の左端にダと家が並んで書いてある。食堂の光景を見たから地図だとわかるが、正直寝ぼけた落書きと言われたら信じる。

「これ、どこかわかりますか?」

 少女は恐る恐る問いかけた。困った、全然わからない。この島は清掃ドローンの通行上わき道が多い。これだけ書かれても大通りかとしか思えない。

「さっきの店員さんに『大通り行ってみたら?』と言われたのですが、実は何度か確かめたんです……反対側の駅まで抜けて、全然わからないんです」

「大通りの方は家全くないですからね」

「そうなんですよ。だけど路地に入っても良くわからないんです」

「写真はありませんか?」

「あります。でも共有機能が多分無理です」

「何故です?」

「父が機能制限を設定してあるので、画像共有するならIDを共有しなきゃいけないんです」

「ああ」

 そりゃあ無理だ。画像を飛ばして共有するのは未成年の場合親からプロトコルがかかってて利用不可能になっていることが多い。だが個人識別番号を教えるのは危険だ。だから代案を出す。

「近所に交番があるからそこまで連れていきますよ」

「いいんですか?」

「ええ。ずっと彷徨われるのも気になりますから」

 今は特に治安が悪い。巻き込まれるのも不安だ。

 少女は安心したようにはにかんだ。

「ありがとうございます!」

 ただ感謝の笑みだった。善意の塊のような子供だ。あまりの純真さに不安になる。だが別れた後は俺の知らないところだ。交番の場所を知っていれば何かあった時頼れるだろう。

「行きましょう。交番はここから十分くらい歩いた場所にあって……」

 説明しつつ歩き出すと、少女は横についてきた。帽子で表情は良く見えなかったが、目の前と写真を見比べているのかどこか真剣な様子だった。育ちの良さを感じ、犯罪に巻き込まて欲しくないなと祈った。


 


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