第四十八話 ファイティングファイター
「く、くくく……地球人、大きく出たなぁ? テメェ如きが俺と勝負?」
「ああ、勝負だ。仮にもトップMovieCherである“
言葉を紡ぎながら、俺は筋肉に任せたステップで“
「ねぇよなぁ! “
「ぐ……」
俺がマイクタイソン張りの左ジャブを放つ。上位ランカーのジャブは常人では見切れない速度だ。当然、ヘビー級チャンピオンのジャブなら何を
“
「なに⁉︎」
「俺を舐めるなヨォ! 地球人ガァ!」
“
「な、なんだ……と?」
俺はよろめきながら、“
「
「……そういことか」
まさか惑星ネクロポリスで不人気な
最新兵器を使ったり、派手なことが好きそうな“
いや、万一の場合に何かしらのスキルを習得している可能性は予想すべき事柄に違いなかった。それが、
俺はヒリヒリする右肩を押さえて、言い放つ。
「へへ……流石、トップMovieCherだな」
「褒めても何もでねぇぞ。もっとも、俺のスキルレベルは3だけどな。テメェ程ではネェ。しかし……」
“
「テメェと違い、
超低空からのタックルだ。受けるのはまずい。
「シュッ!」
俺はローキックを“
乾いた音がして、“
「ぐぅ……少し踏み込みが甘かったか」
「はぁ……はぁ……」
俺は自身の額に流れる汗を拭う。この汗は運動の火照りから出る汗ではない。……冷や汗だ。事態の悪化を悟り、俺は全身から嫌な汗が沸き立つのを感じた。
“
「さすが“
「く……」
マズいな。
「また行くぜぇ〜? 今度は……」
身を屈め、獲物を狙う姿勢となった。
「うまく行くかなぁ〜!? 地球人!」
巨体が地面を蹴り猛進してくる。さっきより、速い! またローキック⁉︎ いや、ダメだ。二度の攻撃は読まれてるに違いない。ならば……
受ける!
「どっせい!」
「な⁉︎」
俺は
「こいや、“
“ズドン“と鈍い音がして、二人の体がぶつかり合う。ミシミシと筋肉が軋み合う。
「ぐ……グググ……」
「ち、地球人……テメェ如きに……」
俺たちは微動だにせず、相手を力任せに押し合う。全身の筋肉が怒張し悲鳴を上げている。
一見すると、ただ抱き合っている様にしか見えない。だが、俺と“
「じゃ、“
「ち、地球人が……」
「アリスから……聞いたぜぇ〜。お前の体には……
「そ……それが……どうした!?」
ギリギリと歯が軋む。汗がダラダラと流れる。筋肉が悲鳴を上げ、全身が痛くて泣きそうだ。
「アリスのバカ力は……同じく……
「グググ……だから……それが⁉︎」
俺は足腰に力を入れ、力を振り絞る。俺の足が地面を蹴り、徐々に前へ進む。
「だからヨォ〜、EMP爆弾で
「ぬおおおぉおォォ⁉︎」
「思うなよォォおおお!」
俺は“
「こ、この技は……ブレーンバスター⁉︎」
「ぐぉおおおお⁉︎ お、重い! ぐあぁ⁉︎」
力任せに“
“
どうやら、“
「……地球人……お前、他に何のスキルを持っている?」
「……さあな?」
「“
「勘違いしているようだな、“
俺は不敵な笑みを浮かべて相手を見据える。“
「ブレーンバスターは俺が地球で覚えた技だ。惑星ネクロポリスのスキルじゃ無ぇ。俺はなぁ……結構、プロレスが好きなんだよねぇ〜」
それだけ言うと、ツカツカと“
「手四つだ。意味が分かるだろ? 相手してやるぜ」
俺が突き出した手を見て、“
「お相手していただける……ってか。舐めやがって、地球人がぁ⁉︎」
俺の差し出した手を払い除け、“
流石に
「ぐっ……」
だが、甘い。
俺はヤツのズボンを両手で掴み、倒れ込む勢いさながら、体を捻らせる。
「な……⁉︎ こ、これは!」
「ドラゴンスクリューだぜ」
横回転のモーメントが人体の構造に逆らう力を加える。強烈な力に耐えきれず、“
俺は掴まれるのを恐れ、サッと“
「ご……ごの……地球人……如きが……」
手を突いて巨体を持ち上げる。だが、その隙を見逃すワケが無い。一瞬で間合いを詰めて、立ち上がる寸前に“
「ごぱ⁉︎」
情けない声を上げ、“
しかし、“
「この……トップMovieCherの俺さまが……テメェみたいな……地球人に……底辺MovieCher如きに……」
今度は全身をバネの様に使い、“ガバリ“と立ち上がる。そして、“
俺は和剣レベル1で覚えた
「さて、“
「地球人如きが……」
二人の間が詰まる。この距離は、もはやお互いの制空権だ。いつ攻撃が飛んできてもおかしくない。だが、俺はまだまだ距離を詰める。“
「もう間合いだぜ? やらないのか?」
「ふん、地球人。
“
「
“
「科学こそがすべてなのだぁ! 死ね、地球人!」
「ああ。そろそろ自己修復機能で次元砲が回復する頃だと思ったよ」
そうなのだ。惑星ネクロポリスの装備は優秀だ。
EMP爆弾で一時的に機能は失うが、時間が経てば自己修復機能で自動的に機能を回復する。装備によって修復時間は異なるのだが、最終的に全快するため、EMP爆弾では一時的な効果無効程度しか威力を発揮しないのだ。
“
だが……
「じゃあよ、次元砲が放たれる前に、俺がお前をボコボコにしてやる。くらえ! “
左ジャブ、右ストレート、左ジャブ、右ストレート、左、右、左、右、左右、左右、左右左右左右……
「オラオラオラオラオラオラオラ!」
「ごぶ……ぶぶぶ……ばばば……ばば……」
“
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
「ご……ご……ごの……」
次元砲からエネルギーを集約する音が響く。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
「ち、ち……きゅう………じ………ん」
“
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
「………ご! ……と! ……き! ……がぁあああ!……」
俺の拳が“
「し……死」
「オラァ!」
猛烈なラッシュの最後に、渾身の右ストレートが“
“
「………」
「“
“
『エネルギー充填完了しました。しかし、使用者の意識を検知できません。エネルギーを発散します』
しばらくうねりを上げた次元砲は、静かに辺りに転がっていった。
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