第四話 恨まれる
転送ポータルの中で、俺は自分の境遇を嘆いている。今日は惑星ダンジョン“火吹き山“に行く日なので、本来ならば新しい冒険に胸をおどらせるはずであった。だが、俺は悲しい気持ちで胸がいっぱいな状態だ。
ああ、なんて俺は不幸なんだ。
アリスのせい(?)で“
俺は自分の将来に
だが、俺の思いとは裏腹に騒動の元となった
「ちょっと、ゴンスケ。私の顔を見てため息吐かないでよ」
「ため息も吐きたくなるよ。俺は“
「ブフー! アハハハハ」
アリスが俺と“
「ヒーヒー、いやぁ、ゴンスケ最高だったわ。“
「響いたって言うか、誰だって“ブサイクゴリラチキン野郎“なんて言ったら怒るに決まってるじゃないか」
「でも、アイツはゴリラみたいなブッサイクな自分の顔を気にしていたから、かなりダメージ負ったはずよ。ゴンスケ、グッジョブ!」
グッと親指を突き出すアリスの言葉に俺は呆れていた。コイツはあの“
それよりも、なんだってアリスは“
「なあ、アリスはなんだって“
俺の疑問にアリスが笑いを止めて、顔を上げる。そして、笑い過ぎて目に浮かんだ涙を拭いながら答えを返してきた。
「“
「え? それだけ?」
「それだけって何ヨォ? 重要な問題よ、これは」
アリスがジト目で俺を睨む。重要な問題だと言っても趣味嗜好の違いじゃないのか。それに、ポリシーが違うなら、動画の視聴者も棲み分けできてイイんじゃないのか?
だが、アリスの考えは違うようだ。腕を組み、人差し指を口の端に寄せて、俺に言い聞かせる口調で言葉を続けた。
「いい? “
アリスは斜に構えた感じで話をしているが、目が笑っていない。どうやら“
「いや、敵対生物ってんなら、殺してもいいんじゃないのか? それが何か悪いのか?」
「大アリよ、大アリ。いい? 敵対生物って言っても、結局は生態系を構成する生物の一角なのよ。それを際限無く殺したら、その星の生態系が狂ってしまうわ」
「それは分かるけど……でも、敵対生物って、お前ら“惑星ネクロポリス“の奴らが放逐した実験生物なんだろ? むしろ殺した方がいいんじゃないのか?」
「チッガーウ! ゴンスケ、違うわ、その考えは! 敵対生物て、意味は“
アリスが俺にグイッと顔を寄せて否定する。急に間近に近づいたアリスの顔とほのかに香る甘い香りに、心が一瞬ドキリとした。
「それらの生物は、惑星ダンジョンで立派に生態系を築いているの。そこを急に全滅させたらどうなると思う?」
「えっと、新しい生態系が……生まれる?」
俺は間の抜けた回答をアリスに返す。なんともアホな回答だ。新しい生態系が誕生するだけなら、アリスがここまで感情的な態度をとる訳がないだろう。
だが、アリスは人差し指を自身の唇に当て、考えるような口調で返してきた。
「新しい生態系、か。ある意味あってるわ。でもね、一つの生物が全滅した後の生態系はどうなると思う?」
「え……? 別に何にもならないんじゃ?」
「違うわ。今まで安定していた生態系が崩れて、生態系異常を引き起こしちゃうのよ」
確かに、生物が丸々いなくなると、その生物を天敵としていた生物が大量発生する事例は地球でもあった。天敵の存在は生物の数を自然調整する
しかし、“
俺は疑問に思い、アリスに尋ねてみる。だが、俺の思いを一蹴するかの様にアリスは“ヤレヤレ“と言った態度で返してきた。
「ふぅ、ゴンスケ。アンタが考えている数の数倍、いや数十倍は殺し尽くすわよ、“
「ええっ?」
「アイツの動画ジャンルは“
「“
俺はゴクリと唾を飲む。“
「アイツの暴れた後は星の生態系はガタガタになるの。それがどの様な結果をもたらすか……最終的に私たちの撮影場所も無くなっちゃうのよ!」
結局は
「それに、私だって惑星ダンジョンの生き物と戦いたくて戦ってる訳じゃないわ。動画撮影のために仕方なく戦い、殺しているのよ。だから、アイツの無駄に殺し尽くすやり方が気に入らないの」
前半は嘘だな。コイツは絶対に戦闘狂だ。だが、後半の思いは俺にも共感できる。
生き物を無駄に殺すなんて、日本で育った俺には受け入れ難い。MovieCherとなって、殺さざるを得ない状況だとしても、無駄に殺しを楽しむ動画を俺は撮りたくない。
とにかく、“
許し難い相手だが、無力な俺が出来ることは、できる限り関わらない様にすることだ。口惜しいが、“
だが、俺の一種諦めた思いは一瞬で砕かれた。
「ゴンスケ。“
「嘘ォ!?」
「そうよ。だって、アイツ、私たちの行き先を確認してたわよね」
そう言えば、“
そんな俺の思いを読んだのか、アリスの一言が更に俺を凍り付かせる。
「仕返しって言っても、ただゴンスケをボコるんじゃないわよ。“
「ここここここ殺し!? 殺しは犯罪だぞ、アリス! 惑星ネクロポリスでは殺しが許されるのか!?」
「そんな訳ないわよ。ただ、惑星ダンジョンは惑星ネクロポリスの法律が及ばない治外法権の場所よ。優先されるのは原住民の法律……というか原始的なルールくらいね。まぁ、原住民でも大体が殺人は犯罪なんだけどね」
「じゃ、じゃあ、“
「“
「なんだって!? そんなルール無用なことをするの、あの人!?」
なんと言うことだ。恨みを買うどころか命を狙われるとは。しかし、悪口言われただけで、人殺しをしようとするなんて、惑星ネクロポリスの住民はどう言う
絶望で混乱している中、アリスは俺を励まそうとしているのか、ポンと肩に手を置いて口を開いた。
「良いこと思いついた」
「え?」
アリスが満面の笑みを浮かべている。なんだろう、この表情には悪い予感しかしない。
「私たちが“
「ホゲェ!? あ、あんなのと戦うの!?」
「そうよ。アイツをぶっ飛ばす動画なら結構視聴数を稼げるわよ。それに、火吹き山の生態系も守れるしね。よし、ゴンスケ、頑張れ!」
「が、が、が、が、頑張れってどうやって!?」
「死ぬ気で頑張るのよ」
“死ぬ気で“って言うか“死ぬ“しか思いつかないんですけど!
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