第17話

 どの星にも、半円状のドームのような天井を持ったコロニーがいくつか存在する。


 まだ今の技術では大きなコロニーを作る事が出来ないから。という理由と、万が一どこかのコロニーに異常が起きても、別のコロニーへと逃げれられる事ができる。という理由があるらしい。



 それぞれのコロニーを行き来する為に、トンネルのような道が存在し、その中をタイヤの無いバスのような乗り物が走っており、それに乗って移動するのが一般的な方法だ。



 私たちも、今それに乗って移動している。




「ねぇ、セラ?どこか行きたいお店はある?」


「ううん。とりあえず洋服が欲しいと思ってる。ムーンにはあまりそういうお店が無いみたいだから」


「へぇ、そうなんだ?」



 そうなんです。


 ここ何日かずーっと月について調べているのだけど、あの星は本当に研究施設しか無い。娯楽施設と思われるものが、1つも無かったのだ。



 レディスに比べて小さい星だから、というわけでは無く、多分...必要無いから。



 おそらくあそこには、セラのような人たちがいっぱいいて、セラのようにファッションなんか興味なく、白衣や作業着で過ごしているに違いない。セラのように!!!



 手持ちの服は、よく分かんない地味な服ばかりだし、月へ行ったら買うことすらできなくなってしまうなんて。それだけは回避だ。



 せっかくこんな美少女になったのに!!

 このままだと、生まれ変わり損だ!!!





「?セラ、ついたわよ?」


 ...そんな事を考えていると、いつの間にか目的地のコロニーへと到着していたようだ。




 コロニーの中は、まるで大きなショッピングモールに来たみたいに、いろんなお店が並んでいた。


 洋服や雑貨、おもちゃやお菓子、今では珍しい紙の本屋さん等、とにかくいろんなお店がある。



 そしてとにかく人が多い!!




「わぁ〜!と、ととっ!」



 沢山のお店と人に気を取られて、何もない所で足が絡まりつまづいた。すかさず後ろにいたウインタが支えてくれる。


 これは恥ずかしいヤツだ!




「あ、ありがとう。へへ」


「セラ様、お気をつけて。ここは私たちのコロニーよりも重力が少し軽くなっています。そうする事で、長い時間お買い物を楽しめるようになっているのですね」


「そうなんだ!」


 試しにその場で少し、ジャンプしてみた。


 うん、確かに身体が少し軽い気がする。買い物するために、重力の大きさを変えるとは...








「セラ!この服どうかな!ここに立ってみて」


 とりあえず近くにあった洋服屋さんに入るなり、リリカがさっそく服を選んでくれたようだ。手にはいくつか洋服を持っている。



「こ、こう...?わぁ〜!いいね!!」


 言われるがまま、等身大のモニターの前に立つと、そこにはリリカが持っている服を着ている、私の姿が写っていた。




 これは素晴らしい技術だ...!!


 しかも、目の色と同じ赤の可愛らしいワンピースが本当に似合っている...!自分の事ながら、フランスとかのお人形さんみたいでとても可愛い。





「セラ様、リリカ様、こちらもどうでしょう」


「え「ウインタさん!いいですね!」」



 ま、まずい...セラ好き2人がタッグを組み出したようだ。思わず冷や汗が流れ出す。



 これは...人形は人形でも、着せ替え人形になる予感しかしなくなってきた...!!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る