第12話
家へ帰ると、ラボの中でウインタとゼスラが私を待っていた。正直、ゼスラのことはすっかり忘れてしまっていたので、かなりびっくりした。
「おそいぞ!!」
「ご、ごめん」
ゼスラは仁王立ちで腕を組んで片足をイライラと踏みならしている。触らぬ神に祟り無し、ここはひとまず謝っておこう。
「お帰りなさいませ。セラ様」
ウインタがそばに来て、荷物を持ってくれた。私はひとまず椅子に腰掛ける。
「ただいま」
「ゼスラ様は、先日完成されたエンジンパーツを見たいとおっしゃられて、セラ様が帰られるのを待っておられました」
「うん。ウインタ、持ってきてくれる?」
「かしこまりました」
ウインタが用意してくれたお茶を飲む。ゼスラは椅子にも座らず、行ったり来たり忙しなく部屋をウロウロしている。
ウインタがすぐに戻ってきた。たぶん、用意してくれていたのだろう。
「ウインタ、ありがとう」
ウインタに声をかけると、彼はニッコリと頷く。ゼスラは私が声をかけるより先に、かぶりつくように見始めた。いろいろ角度を変えて見たり、起動して動作を確かめたりしている。
(そんなに見られると、緊張するな…)
セラの記憶を頼りに、忠実に作ったつもりだが、今さら心配になってきた…
「...まぁ、“設計図通り”だな。完璧だ」
完璧と言う割には、ゼスラはちょっと含みのある言い方だった。が、彼の不満げな顔をしている理由は分かっている。
セラはいつも、最初に作った設計図より、必ずクオリティを少しでも上げて仕上げていた。作っている途中で、改善点を見つけるからだ。
(今回の事故も、そのせいで起きたのだけど…)
私にも、セラが何をしたかったか分かっていたけれど、改善策を生み出せなかったのだ。同じようにやれば、また事故が起きる。それを避けるには、“設計図通り”にするしかなかったのだった。
「今回は事故があり、作業時間に余裕がありませんでしたからね。完成しただけでも、素晴らしいことです」
ウインタはすかさずフォローを入れてくれた。ゼスラはまだ少し不満気な顔だったが、ひとまず納得してくれたようだ。
「本体はもう出来てるから、いつものようにあとはこっちで仕上げとく。もう次のやつは考えてるのか?」
「えっと...」
私は言葉に詰まった。
そんなもの全く考えていない。休みの間も、ひとまず完成させてからは、近場をウロウロ探索したり本を読んでいただけだ。
(どうやって誤魔化そう…)
「?まぁ、スクールを卒業したらいくらでも作れるからな!」
私の反応に不思議に思いながらも、ゼスラはワハハと大きく笑いながら、ようやく席につく。
(言うなら早い方がいい…)
私は覚悟を決めて、ゼスラを見つめた。
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