第11話
教室の中は、かなり変わっていた。
前に先生が立つためだと思われるスペースと、教卓のようなものがあるものの、黒板がない。生徒たちが座る机は、大学の講習室のように斜めになっていて、1人のスペースがとても広い。
個人的には、座る椅子が木のお尻が痛くなってくるような硬い椅子ではなく、背もたれもしっかりついた座り心地の良さそうな椅子だったのが嬉しかった。
(これが未来の教室なのか…)
自分の席に着くと、隣の子が何か言いたそうにチラチラとこちらを見ているのが分かった。透き通るような綺麗な長い髪の毛を、クルクル巻いて、ひらひらのスカートを着ている。【これぞお嬢様!】という感じのこの子も、友達?の1人、リリカだ。
(また、?なのか…)
「セラ…おはよう!」
リリカは意を決したような表情で声をかけてきた。
「リリカ、おはよう」
私が挨拶を返すと、ホッとした表情に変わった。
「怪我したって聞いたけど、大丈夫?」
「うん。平気!心配してくれてありがとう」
お礼を伝えただけだが、リリカは先ほどまでの女の子達と同じように、ひどく驚いていた。でも、その後すぐ何か言いかけていたようだったけど、授業開始の音楽が鳴ってしまったので席へ戻っていった。
(これが本当に友達…?)
私はもう一度しっかりと記憶を探すことにした。
セラの交友関係はかなりハッキリしている。
まず、周りで騒いでいた女の子達。彼女達は友達では無いようで、名前すら知らないようだった。基本的に相手にするのは時間の無駄だそうだ。普通にひどいと思うが、それでファンの子達も喜んでいるらしく、ちょっと意味がわからないので、ひとまず置いておく。
次にゼスラ。彼は友人と言うより仲間に近いらしい。同じ趣味から意気投合し、一緒に色々作ったりすようになったという。必要なこと以外は話さず、学校で会っても用がなければ、全く話さないようだ。ゼスラもセラと同じタイプという事だろうが、この関係は異様じゃないだろうか…
そして最後にリリカ。リリカに関しては更に異様だった。彼女はこの星“レディス”の最有力者の孫娘で、想像通り超お嬢様だった。
気が弱く大人しい性格の彼女は、友達がいない。セラは研究費の援助をしてもらう代りに、仲良くしてあげている、という全く理解できない関係だそうだ。本当に意味がわからない。
セラになりきろう作戦は、早々に諦めた方がいいらしい。卒業までの間なら、なんとか…と思っていたが、性格の違いが大きすぎだ。
(帰ったら、ウインタに相談しよう)
授業が全て終わり、帰りの支度をしていると、リリカがまた意を決したような表情で近づいてきた。
(意を決さなくていいから!!)
心のなかで嘆く。
ちなみに、授業自体は全く問題無かった。セラは本当に頭が良い。前の私も悪くは無かったが、先生の言っている内容がスーッと入ってきて理解できるし、質問されても難なく答えが出るという感覚は初めてだった。記憶力も良いようなので、今後も大丈夫そうで安心安心。
「あ、あの!セラ!」
「なぁに?」
緊張を和らげてあげようと、出来るだけ優しく返事をしてみるが、うん、あまり意味は無いようだ。
「こ、この間ね、美味しいケーキ屋さんが出来たってメイドさん達が言ってて...その、よかったら、一緒に行かない...かな?」
「行く」
少し食い気味に返事をする。
「そうよね!忙しいわよね…」
「いや、行くって!」
私の返事をようやく理解したのか、目を丸くして驚いている。口がぽかんと開いてしまっていた。
「え!いいの!?」
「うん!あ、でも、今日はこれから予定があるから。今度のお休みに、ゆっくり行こうよ!」
「え...ええ!わかったわ!」
うっすらと目に涙を浮かべてそう答えると、リリカはよほど嬉しかったのか、踊るような足取りで帰っていった。
(リリカ可愛いな…仲良くなれそう)
あんなにいい子なのに、利用してお金をもらっていたなんて、同時に私は申し訳なさでいっぱいになった。
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