第7話
家に帰ってからは、とにかく私は“セラ”になりきって過ごせるよう気をつけた。彼女が急に別人のようになってしまったとあれば、家族は心配するだろうし、変に思われて家を追い出されるかもしれないと思ったからだ。
ここは私がいた日本どころか、地球でもない。追い出されて、1人だけで生きていける気がまったくしない。
(それだけは、絶対に阻止だ!)
...しかし、この“セラ”という人物、なかなかに変人だった。
彼女は、異常なまでに機械に執着していた。家の隅に専用のラボがあり、そこでご飯も食べず、一日中作業しているらしい。
初日、リビングでくつろいでいたら、まるでお化けでもみたかのようにロカに驚かれてしまったので、それ以来ほとんどラボですごしている。
ウインタと、セラの設計図を頼りに、作業途中だった機械のパーツを完成させたが、私には何が面白いのか理解できなかった。
それでも頭や身体は覚えていて、私の気持ちなど関係なく、いつのまにか勝手に完成した。
(ラボを半壊させ、大怪我までしたのに、作業を続ける事を止められもしなかった...。きっと、今までにも同じような事が何度もあって慣れているんだなぁ...)
しかし、ご飯を食べないというのは、私の心に問題が出てきそうなので、それだけは真似することができなそうだ。
それから、この時代のスーパーがどんなところか知りたくて、母さんの買い物について行こうとしたら、これもまた激しく驚かれた。
セラは、家の事は全く何もしていないらしい。年頃の女の子が、ウインタがいるとは言え、家事の一つもやらないなんて...大丈夫なのだろうか?この時代ならば普通の事なのか?
(機械のことばかりじゃなく、生活常識も理解しておいて欲しかったよ...)
常識的なものは欠落しているが、セラは本当にいろんな事を知っていた。
1500年以上前、地球は隕石落下の危機に迫られていて、人間は他の星へ移住することになったらしい。初めは月へ、そこから人類総出の科学革新が起こり、ワープ技術が誕生。
銀河も超えて、人が住めそうな星を探し、移住していくことに成功する。今住んでいる“レディス”という星も、その中の1つ。
ちなみに地球は、隕石落下の影響で有害なガスに覆われて近づくことも出来なくなってしまったという。それはもちろん、人が住むこともできないという事を意味する。
(これを知った時、私はかなり落ち込んだ)
上を見上げれば、昼間はいつでも綺麗な青い空が見え、太陽の光すら感じるのに、それは全て偽物で。夜は恐ろしいほど綺麗な星空なのだけど、なんだか宇宙の外に投げ出されてしまいそうで、見れなくなってしまった。
土の匂いも、風が頬に当たる感覚も、虫の音も、うだるような暑さも、凍えるような寒さも、何も無い。
(これは早々に生きる楽しみをみつけなければ)
せっかく、ハイスペックで産まれたのにウジウジしていられない!!新しい人生、前の人生の分まで楽しまなきゃ!
私は強く決意した。
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