第2話

 もう一度めが覚めると、今度は本当に布団の中だった。

 身体がかなり重たく、起き上がることができない。横になったまま、首だけで辺りを見回す。おそらく病院のようだ。

 温かみのある壁紙に囲まれて、窓からは星空が見えた。でも、身の回りには見慣れないものが多く、テレビや冷蔵庫だと思うものは、初めて見る形をしていた。


(階段から落ちて、あんなに怪我をして血もたくさん出ていたのに、なんとかなるもんなんだなぁ)

 改めて身体を確認する。少し、身体も動かせるようになってきた。腕や手には傷一つ無い。


(え!?)

 傷一つ無いこの手は、自分の手では無かった。

 肌の色はやけに白いし、指が細くて長い。その割に腕はかなり筋肉があるようで、引き締まっているように感じた。


 どくんどくんと、心臓の音が大きくなる。


(これはいったい...)

 どうにか起き上がり、布団を剥ぎ飛ばし、全身を確認する。肌触りの良い紺のパジャマのようなものを着ていて、胸の膨らみが見えたので女性には間違いないが、明らかに身長が伸びている。


「目が覚めましたね」

 たぶん、お医者さんか、看護師さんだと思われる女性が部屋に入ってきた。水色の服を着ているが、私が今まで行った病院では、見たことがないので判断がつかない。


「ここはどこですか?」

 やっぱり、私の声では無い。低めだけれど、どこか少し幼さが感じられるるようだった。


「ここは病院ですよ。何があったか覚えていますか?」


「...いいえ。」


「家の人の話によると、新しい何かの乗り物を作ろうとして、それが爆発しちゃったみたいね。」

 少し笑いつつ、手際よく私の身体を確認しながらも、説明してくれる。


「でも、良かった。綺麗な顔に痕が残らなくて...ほら、見てみて」

 その人は、ポケットから手鏡を取り出し、渡してくれた。


 どくん、と心臓の音が聞こえた。


 ゆっくりと鏡を顔が映る位置に持っていく。そこに写ったのは、白い肌に白い髪、ぱっちりとした大きな赤い瞳の美少女だった。


「爆発で髪が燃えたりして、衛生的にも問題があったので、焦げたとこだけ切りました。明日、退院したらキレイにしてもらってね」

 それだけ言うと、その人は病室から去っていった。

 これは...状況を整理しよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る