第491話 新章終了


「せ、先輩! こ、これを見て下さい……!」


 今日の後輩はいつもと違い、興奮や驚きといった感情はなく、どちらかというと動揺しているように見えた。


 彼女はどんなことが起きても楽しく乗りこなしてしまうサーファータイプだ。それなのにここまで動揺するとは、一体何があったんだろうか?


「こ、これはっ……!?」


「はい、なんとプレイヤー達が銃火器を持って魔王城へと侵攻しているのです。どうやら、あるプレイヤーがレシピを獲得したようで……」


「何っ? もうそこまで到達したのか? 銃火器は鍛治師の中でもかなり熟練度を上げて、尚且つ別ルートに乗らなければいけないはずだが?」


「それがどうやら、一部の熱狂的な銃火器ファンにその情報が漏れ出たことにより加速度的に解放されていってしまったようです。現状ではロケットランチャーまで作成可能のようです」


「分かった。じゃあその鍛治師の動向はしっかり追ってくれ。それにしてもまさかもうロケランまでとは……」


 銃火器は最近のアップデートによって追加したのだが、レシピの入手過程から、素材入手、作成までかなりの難易度を設定していたはずだ。


 それなのに、こうも短時間で……


 その難易度と引き換えに一度作ってしまえば誰でも扱えるというお手軽性能であるため、このような惨劇になるのはある程度想定はしていたのだが、そのスピードがあまりに予想外だ。


 今一度何があったのかを正確に把握する必要があるな。


「彼は、彼は何をしているんだ?」


「ほら、彼はユグドラシルですよ。現世との連絡もまともに取れないので、まさか自分の城がこんな状態にあるとは思ってもみないでしょうね」


 あぁ、そうだった。まさかこれほどまでに噛み合ってしまうとはな。彼としても正に寝耳に水だろう。


「現状として魔王城はどんな感じだ?」


「んー戦力的には戦えないこともないでしょうけど、流石にノーダメで跳ね返すことはできないでしょうから、悩みどころだと思いますね。私なら彼が帰ってくることを信じて時間を稼ぐか、逃げますね」


 まあ、そうなるか。魔王城は、良くも悪くも彼に大きく依存しているからな。というか、彼の存在があまりにも大きすぎるが故に依存状態になっちゃってる、というべきだろう。


「ん、そういえば何かイベントをするって言って無かったか?」


「へ?」


「ほら、『配下ランダム闘技場』みたいな奴」


「……いやだってほら今全然そんな状況じゃないでしょ。ここでイベント発表なんかしたらもうカオスですよカオス」


「まあそうか。じゃあとりあえずは没か?」


「そうするしかないじゃないですか!」


 なるほど、だから彼女はさっきは動揺してたんだな。自分のアイデアが使えなくなったことに対して動揺して落ち込んでたんだな。


「というか、どうするんだ? このまま魔王城には何もしないのか? 一応彼はエンドコンテンツ的立ち位置なんだろう?」


「はい。でも、流石にまだ何もしませんよ? というか、基本的には干渉しない方向でいきます。だってそうじゃないとフェアじゃないでしょう? それに、まだ彼自身には何もされていないんですから、私たちはもう少し見ていましょう。傍観者として」


「分かった」


 私がそう言った瞬間、魔王城が大破した。


「「……え?」」











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新章が始まる前に終わりました。

どうしてこうなった…??

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