第479話 危ない話


「おい、上に掛け合ってみたらオッケーが出たぞ。今すぐには発注できるわけじゃないから、実際に届くのは一ヶ月以上先になるだろうが、お望みの品が届くそうだ」


 ガバッ


「ほ、本当ですか? やったー! これで更なる研究ができます!」


「研究?」


「あ、いえ忘れてください。これは完全なる私用といいますかなんというか……」


 いやいや、私用だったら会社の金で買ったのは不味いんだが? まあ、後輩以外のみんなにも使って貰えば済む話だが、後輩が独占なんかしちゃった暁には、私が公正取引委員会にならなければいけないかもしれない。


 だが、それをツッコもうとした矢先、彼女の先制攻撃を食らってしまった。


「先輩、先輩って『作品』って言葉を聞くと何を思い浮かべますか?」


「え、何? 作品?」


「はい、作品です。単に作品と言っても色々な種類があると思います。その中でも、パッと思いついたので構いません教えてください」


「ん、そりゃゲームだろう。というか、ゲームしかないだろう。そもそも何故そんなことを聞くんだ?」


「いや、ほら今言ったように作品と言っても色々なものがありますからね。先輩のようにゲームという方もいれば芸術なんか答える人もいます。小学生の図画工作だって立派な作品ですよね? では、何が作品を作品たらしめるのでしょうか? 適当に河原で拾ってきた石を持ってきて、こ んれが私の作品だ、って言い張ることは可能なのでしょうか?」


 ん、中々面白そうで難しい質問じゃないか。


「んーそうなってくるとやはり作品に込められた気持ちが、作品を作品にするんじゃないか? もし、石を見て、その人が作り手の気持ちを少しでも垣間見ることができたのなら、それは立派な作品だろう」


「おぉー、それっぽい!」


 なんだよそれっぽいって。だが、ここで次は私のターン。


「なぁ、」


「でも先輩。作品に気持ちを込めているけど売れないものや、気持ちがこもってなくても売れるものってありますよね? その違いってなんなのでしょう?」


「それはあれだろさ、作者が完璧ではないように受け手もまた完璧ではない。全員が完璧であったのならば単純な出来栄えだけで評価されるのだろうが、いや、そうとも言い切れないか。まあ、とにかく、作品に込められた想いを読み解くのは、超難問パズルを解くより難しいってことだ」


 って、さっきから私は何を答えさせられているのだろう。ってか、流石に私からも彼女に質問をさせて欲しい。


 ……あれ、なんて聞こうとしてたんだっけ?







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危ない、完全に寝てました。間に合ってよかった。

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