第476話 多分二人は深夜テンション
「はぁ、結局ダメでしたねー」
夜ご飯を近くのファミレスで済ませてオフィスへ戻ると、そう嘆く後輩の姿があった。
「ん、どうしたんだ?」
「いや、ほらこれを見てくださいよ」
そう言って私に二つのビデオを見せてきた。一つは女性プレイヤー三人がかりで彼を倒そうとするところ、もう一つは一人だけだが、王様たちを背後に彼と戦っているところ、だ。どちらも最終的には彼に敗れたそうだが、なんと一人の時の方が善戦していた。
「なんでこの時はこれほどまで耐え抜くことができたんだ? というか、同じ人物がいるならこの手法で味方を守っていればもしかしたら勝てたんじゃないのか?」
単純な疑問だ。三人の時に本気を出さない理由なんてあるだろうか?
確かに綱引き理論というのがあって、大人数だと一人の時よりも頑張り度合いが減ってしまう、というのはあるかもしれないが、それでもこのゲームの世界で手を抜くとは考えづらい。
「ここ見てください、この右手。ほら、何か握られているでしょう?」
そう言って彼女は二つ目の方のビデオをズームした。確かにあまりよく見えないが、何かが握られている。
「これ、王家に伝わるお宝なんですよね。流石にこれだけじゃないですが、これは所有者の力を格段にアップさせるチート級のアイテムなんです。普通なら手に入れるどころか、拝むことすら難しいですが、王様たちも命の危険があっては、貸し出す他なかったのでしょうね。それで彼にも対抗できる力を得たというわけです」
なるほど、チートアイテムを使ったのならば納得できるな。
ただ、そのアイテムを持ってしても彼に勝つことができないとは……チートを超えるチート的な存在とは。
「ん、ちょっと待て。ということはそのアイテムの所有者は彼なんじゃないか?」
「え、そうですけど?」
「不味いんじゃないか?」
「えぇ、不味いですよ?」
「どんくらい?」
「ものすんごく」
「お、おう……」
「しかも聞いてくださいよ。そのアイテム、なんとユグドラシルに向かうためのキーアイテムの一つなんですよ!」
「なにっ!? ……そもそもキーアイテムって何個あったっけ?」
「さーんーこーでーすー! そのくらい覚えておいてくださいよ! しかも、二つ目のアイテムの情報まで、王様にバラされちゃったんです!」
い、いやそれは王様悪くないだろ多分。彼の前で情報を守秘できる奴がいたら逆に教えて欲しいくらいだ。
「ってことは、彼がユグドラシルに到着するまで秒読みってことか?」
「はい、ラスト一つ次第ですが、二つ目はもう待ったなしでしょうね」
「じゃあ、もう今しかないんだな」
「え? 何がですか?」
「ユグドラシルを彼対策の為にアップデートするのは」
「は、は、はいーーーー?!??!??!??!??!?」
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え、お前が深夜テンションなだけだろ、って?
ま、まさか〜
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