第475話 猫の腕


「従魔が頑張っているというのはどういうことなんだ?」


「んー、まずはこのシーンを見て欲しいんですけど、王都を支配するために造られている柱を壊したいプレイヤーと、守りたい従魔、の構図になっているんですよ」


「うむ」


「それで、プレイヤーサイドは誰かれ構わずゾンビにしてしまう能力をもった男とその軍団に対し、魔王側はこの六本腕が生えた大きめの魔獣一体だけなんですよね。これ、普通に考えたらどっちが勝つと思います? ゾンビは本当に無数にいて、従魔と柱を同時に攻撃します。更には、他のプレイヤーの協力も一応あるっていう状態です」


「そりゃ、普通に考えたらプレイヤー側だろうが、彼の従魔は普通じゃない。そうだろ?」


「ま、そうなんですけどね。でも、今回は珍しく? 流石に? 彼の従魔も苦戦したようです」


「ん、そうなのか?」


 彼、及びその従魔に関しては苦戦という二文字さえ似つかわしくない。余裕で常勝、みたいな言葉の方がピッタリな気がする。


「はい。大量のゾンビの前に六本の腕ではどうも対処しきれなかったようです。しかも、ゾンビは的確に急所を狙わなければ無限に襲ってきます。そして、従魔は一人でしかも柱も守らなければならない。流石に手が回らなかったようです。猫の手も、いや腕も借りたかったでしょうね」


 ……これは上手いのか? 一旦スルーしよう。


「流石に、か。でもそうなってくるとどうやって逆転したんだ? このままだと普通に負けてしまいそうだぞ? 彼がやってきて一気に殲滅したとか?」


「あー、それも確かに見てみたいですが、今回は従魔が主人公パターン、でした」


「従魔が主人公パターン?」


「はい、ほら主人公って戦いの中で成長するじゃないですか。あと、窮地に追い込まれれば追い込まれるほど強くもなるじゃないですか。ソレです」


「あっ、それか。そういうことか」


「そういうことなんです。ただ、今回はかなり苦戦したことには間違いないらしく、ギリギリのところで覚醒したようです」


「ほう、そうなってくるとそこまで追い詰めたプレイヤーにも興味が湧くな」


「そうですか? あくまで一つのスキル、一つの能力に頼り切った戦法ですよ。そんなに価値はありません。事実、従魔が覚醒するとなす術もなくやられておりました」


「そ、そうか。それでどんな風に進化したんだ?」


「なんか、よく分からないんですけど、ゾンビに噛まれたじゃないですか。その時に従魔もゾンビにされかけたんですよ。それをどうやってか気合いで打ち勝って、しまいにはそのゾンビたちの支配権まで強奪しちゃんたんです」


 え、えぇ……


 ってか、貴方がよく分からないとか言っちゃったらおしまいじゃないんですか??









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先輩の決め台詞は「え、えぇ……」で異存はないですよね??

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