第469話 万点満点


「先輩ー!」


「ん、どうした?」


 それはオフィスの窓から暖かな陽射しが差し込んでくる、昼下がりのことだった。いつものように何の脈絡もなく唐突に後輩から話しかけられたのだが、その口調はどこかいつもと違う雰囲気を纏っていた。


「どうしたも何も、いつになったら新作についての内容を私に教えてくれるんですか! 私もチームの一員ですよね?」


 あぁ、そういうことか。いつもと同じように、ゲームの話ではあるものの、いつもと同じゲームの話ではない、ということか。


 違和感の正体に合点がいった私は後輩の言葉について、少しばかり思案した。


「新作、か」


「え、何ですかその反応! もしかして新作の準備ってのは全くの嘘で、本当は何も準備していなくてただダラダラと過ごしていただけなんですか?」


「いや、それはない。ただ、難航しているというのも事実だ」


「難航?」


「あぁ。現行のNSOの運営をしながらの新作の考案なのだ、少し手間取っていても仕方あるまい」


「いやいや、実際の運営は私を含む運営チームで行なっているじゃないですか! 先輩は特に関与していないですよね?」


「いや、チョコチョコ他のメンバーから上がってくる問題に対して、の対応を行なっている。それは私がオフィスにいない時も、だ。であるから全く関わっていないというわけではない」


「へーそうなんですねー」


 おい、全く興味なさそうだな。自分から聞いといて。


「ただですよ先輩、新作って言ってもこの時代に新作を出すのは難しいんじゃないですか?」


「というと?」


「ほら、大昔みたいに、それこそ「竜の冒険」や「衣嚢の怪物」のようにゲームタイトルが少なかった時はそれだけが正解で、皆が遊んでいましたが、今となっては様々なタイトルが現れていますよね? それこそFPSやRPG、ローグライクからアクション、シミュレーションまで様々です。そうなってくると、百点満点のゲームを出すのって難しくないですか?」


「まあ、それもそうだな」


「だったら新作の発売なんて辞めて……」


「だが、そもそも満点のゲームを出すという発想自体が間違っているとしたら?」


「え?」


「そもそも、だ。この世に全員から受け入れられるものなんて存在しないのだ。ならば皆からの百点を求めることには意味がない。それよりも遊んでもらえる人口をいかに増やすか、に焦点を当てて考えることのほうが重要だ」


「た、確かに……」


「だがまあ、それでもそれに頭を悩ませているのは確かだがな。どんなジャンルにせよ、王道か、それを外したニッチ戦略で行くのかなど、考えなければいけないことはたくさんある。今の時代、目新しさだけで勝負することも難しくなってきたからな。だからこそ、もっと思考を積み重ねなければならないのだが……」


「あ、先輩、彼が何かとんでもないことおっ始めてますよ!!」


「は?」


「ほら、見てください! この地下に集められた大量のプレイヤーたちを! 何を始める気なんでしょう?」


 その光景はこれからの私たちを暗示するかのような、異様で恐ろしいものだった。










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運営編まで読んでくださっているコアな死民の皆様にお伺いします。

皆さんにとって死にたがりとは何点の作品でしょう?

もちろん低くても大丈夫です!だって、皆様が読んでくださっているという事実だけで私は嬉しいのですから!(トロントロンの目

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