第466話 厳冬


「さぁあああああああっっむいっ!!!」


 後輩がオフィスに入るなり、大きな声でそう言った。オフィスの中だから寒くはないだろう、とツッコミたかったのだが、まあ、本人からすればまだ温まっていないので、仕方のないことだろう。


「ちょっと寒すぎません?」


 後輩がコートを脱ぎながら私に接近し、そう言った。


「うん、確かに寒いな。まあ、十年に一度の大寒波だからな」


「はぁ、十年に一度の〜って三年に一回は聞きません? もうちょっと頻度落としてもらうことってできないんですかね??」


 なんだよそれ、と思ったが、確かにそのくらいの頻度で聞いているかもしれない。少なくとも、体感の上では。


 そうか、恐らくだが寒波に関しては十年に一度、なんだろうな。でも、たとえば積雪量であったり降水量であったり天候に関しては色んな観点で十年に一度が存在するのだろう。そして、天候だけに限定せず、その他様々な事柄、事象を考えれば……


 確かに三年に一回くらいは聞いてるかもな。


「先輩は寒いの平気ですか? というより、好きな季節とかってあったりしますか?」


 好きな季節か。こういう話題はいつぶりだろうな。大人になってくると、好きも嫌いもなく、ただいつも決まった周期で訪れるものでしかないからな。そう、まるで定期便のようなものだ。そこに何の感情も付随しない。


「そうだな、強いて言えば秋だろうか?」


「秋、ですか?」


「あぁ、夏は暑いし冬は寒い、春は花粉が飛ぶだろう? それに決算時期が三月なのもいただけない。必然と秋しか平穏には暮らせない。ただ、秋はいかんせん短いからな。半年くらい続けばいいものを」


「なんですかその合理主義の塊みたいな返答はー! もうちょっと情緒あふれる答えが返ってくると思ってたのにー! はぁ、まあいいですよ。でも、地球は温暖化してるってずーっと言われ続けてるのに、なんでこんな寒い日があるんでしょうね? 温暖化するならちゃんと冬も温暖しろよ! って話ですよね」


 ふむ、確かにそれも最もな指摘だな。


「だが、どこかで聞いた話だが、温暖化による影響でアラスカかどこかの氷がとけ、上空に大きな暖気の穴ができるらしい。そしてそれに追いやられるように寒気がこの私たちの住む場所まで降りてきているらしいぞ」


「へー、そーなんですね。でも、ちょっと暑くなってきたのでアイス買ってきてもらえませんか?」


「は?」


「いやほら冬の方がアイスが溶けにくくて美味しいじゃないですか!」


「いや、別に今は冬の方が美味しく感じる件について、は聞いていないんだが」


 自分が寒かったから私に寒さについてトークさせておいて、暑くなったからアイスを買わせようだなんて……冬はだから嫌いだ。








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皆様。死ぬほど寒いと思いますが、死なないようお気をつけください。

私は今からアイスを買いに行くかどうかで本気で悩んでおります()

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