第464話 怨恨
「ユグドラシル、かー」
「え、どうしたんですか。そんな染み染みした声を出して」
「いや、まあほらあれだよ。長年育ててきた我が娘がついに結婚する、みたいなそんな感慨深さがあるんだよ」
「え!? 先輩って奥さんと娘さんいたんですか!?」
「いや、例えだよ例え。でも、ほらユグドラシルに関してはそのくらいずっと長年温めてきたものではあるから、その一端に触れただけでも、こう何かくるものがあるんだよ」
「へぇーそんなものなんですか? 先輩も歳をとりましたね」
「まあ、皆老いて行く存在だからな。私だけでなく、皆も同じように歳を重ねているのだから、別に悲観することでもないだろう」
「それもそうですか! それで、ユグドラシルってどんな感じでしたっけ?」
「え?」
「いやほら、制作したのだいぶ前じゃないですか? 私もうすっかり忘れてしまってるんですよねー」
おいおい。そりゃ私と後輩で温度感も違うはずだ。
「そうか。ならば、彼と一緒に楽しむのもまた一興だと思うぞ? どんな敵が出てきて、それをどのように倒すのか、彼と同じ目線で楽しめるのはとても面白そうじゃないか? 私だって記憶を消すことができるのならば、プレイヤー視点で楽しんでみたいという気持ちがあるからな」
「確かに、それはナイスアイデアですね! じゃあせっかくだからドキドキワクワクしながらユグドラシルを彼が攻略してくれるのを待ってますね!」
いや、なんかそう言われると、さっさとクリアして欲しい、と言ってるみたいでモヤモヤするんだが。まあ、楽しんでくれるのならば作り手としては何よりだな。
「んーでもなんか内容についてはぐらかされた気がするなー。もしかして先輩も覚えていないだけなんじゃないですかー?」
「そ、そんな訳ないだろう。そんなことより、彼は今、ユグドラシルのどの辺りまで進んでいるんだ?」
「え? 彼はですね……彼の筆頭従魔をヴェズルフェルニルに進化させたことによりその存在を知りました。そして、それっきりですね。流石に彼とは言えど、エンドコンテンツを攻略するのには一筋縄でいかないようですよ?」
「え!? ヴェズルフェルニルに進化? そしてそれだけ!?」
「は、はい」
「てっきりもうユグドラシルに侵攻を開始しているものだと思っていたよ。なんだ、まだ初期の初期なのか。それにしてもヴェズルフェルニルに進化させてその存在を知る辺り、彼らしいというかなんというか。だって元々はハゲタカだったんだろう?」
「えぇそうですね。そこからの進化ですからかなり無茶なステ振りをしないと到達しないはずですね」
全く、本当に予想外の行動を取ってくれるな、彼は。
さて、私たちの——彼女は忘れてしまっているが——エンドコンテンツをどう攻略してくれるのか。精一杯こちら側も楽しませてもらおうじゃないか。
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