第462話 今年の目標


「先輩ーーー!!! 明けましておめでとーございまーーっす!!」


「おう、明けましておめでとう。今年もよろしくな」


「ことよろですっ!」


 新年にこうして賑やかなムードになれるというのは案外良いことなのかも知れないな。


 以前は、年が明けても昨日と何一つ変わらない日常じゃないか、なんて捻くれたことを考えていたのだが、そうではなく、今日を特別な日と定めて皆で祝うからこそ、昨日と違う一日になるのだと今は思える。


 特別にするかどうかはつまるところ本人次第なのだ。


「先輩! 今年の目標は何か決めましたかー?」


「んー、今年の目標か。いい加減新作をリリースしないとだな」


 去年は雑務に追われすぎて進めていた新作を結局形にすることはできなかった。


 もちろん、私だけの力によって推し進められるものでもないから、この表現は正しくはないのかも知れないが、それでももっと私が主導権持って引っ張っていくことができれば、今よりももっとマシな形になっていたように思う。


 だが、後輩の反応は思っていたものとは異なるものだった。


「えー、新作ですか? 別にそんな無理して取り組む必要なんてないんじゃないですか? 今でも十分NSOは人気ですし、売れ行きも順調ですよ?」


 なるほど、まあ確かにそういう意見もあるわな。別に後輩と対立したい訳ではないのだが、当然私もそのように考える時期はあったし、その上でそれではダメだと結論づけたのだ。


「そうだな。まあ、ありがたいことにある程度、人気も出たし売れ行きも悪くはないだろう。それでも、今年出たゲームの中でトップだったか、と問われるとそうではないと答える人が大半だろう。物事には旬があるからな。それでもゲームだから一度ハマってくれれば寿命は長いが、それでも永遠ではない。つまり、次弾を装填しなければいけないのだ」


「いやー、その理論もわかるんですけどね? 今の顧客を大切にすることも重要じゃないんですか?」


「あぁ、もちろんそうだ。だが、注意しなければならないのは、今の顧客を大切にすることと、次回作の準備は必ずしも二律背反ではないということだ。もちろんそういう側面もあるのかも知れないが、それをなんとか上手いことするのが私たちの仕事だ」


 そして、それを上手くできなければ私たちの船は沈没する。


 これが私だけ、あるいは私と後輩だけならばまだしも、今では関わっている人間がかなり大きくなってしまっている。私だけの問題ではないのだ。それを踏まえた上で私たちは選択をし続けなければならない。


 事と次第によっては今まで育ててきた種子を、果実を、見捨てる覚悟を持ちながら。


 まあ、そんなことしたくはないし、恐らくできないだろうから、二兎を追う方法をなんとか模索しなければならないのだ。


 そうだな、今年の目標は二羽の兎を捕まえること、だな。






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イベントがあると非常に描きやすいですね。元々イベント関連はイチゴちゃんに任せていたのですが、先輩たちの役目になっちゃうかもですねw

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