第454話 番外編〜彼女の秘密〜
「せんぱーい、お腹空きましたー」
時刻はちょうど三時を回ったところ、昼ごはんを食べたことで血糖値が上昇し、それと同時に心地よい日差しが更に眠気を誘ってくる。そんな時に、彼女は何か食べるものを要求しているようだ。
「そう言えば、なんでお前はあんなに食べているのに、そんなに太っていないんだ?」
「え、私ってばスリムですか?」
「いや、スリムだとは言っていない。ただ、単純に疑問に思っただけだ」
若いというだけにしては食べ過ぎだと思うし、太らなさ過ぎだと思うのだ。どこか私が見えないところで彼女が努力しているとしか思えない。それに、彼女は人前で努力を見せるよりかは隠れた努力の方を好みそうだからな。
「えー別に特に何もしていませんよ? あ、もしかして朝ごはんを抜いているからですかね? 単純にそのおかげで総摂取カロリーが少なくなっている、ってのはあるかもしれません!」
ふむ、それだけで本当に変わるのだろうか。朝ごはんを抜いた場合、食べた時と比べて、昼食を食べた時の血糖値上昇率がとんでも無いことになるってのを話に聞いたことがある。総摂取カロリーが減っても血糖値が上がりやすくなってはプラマイゼロなのではないか?
私が訝しげな顔をしているのを見られたのか、彼女はこう続けた。
「あー後はあれですかね? 私、出社する時歩いてるんです!」
「そうなのか!?」
何気に今まで一緒に働いてきたのに初めて聞いたぞ? まさか、彼女がそんな努力をしているだなんて。
「でも、始めたのは最近ですけどね。ちょっと歩数カウント系のゲームにハマっちゃってそこから健康にもいいかなーって思って歩き始めたんです!」
そうか、最近だったのか。ん、でもそれだと太らない理由にはなり得ないな。なんせ、彼女は私と出会ってから一度も太っていないからだ。それに、年々食べる量は増えてきているようにさえ思う。
私が更に不思議そうな顔になったのだろうか。彼女は自分からどんどん喋ってくれた。
「あ、後ですね。これは前にどこかで聞いた話なんですが、ニートが大事らしいですよ。それを意識はしていますね」
「ニート?」
なんでここで家事、通学、就職をしていなくて、職業訓練も受けていない者が出てくるんだ? その人たちに食糧を分け与えてるのか?
「あ、NEETの方のニートじゃ無いですよ? NEATと言って英語でなんだったかな? んーノットエクササイズアクティビティズサーモジェネシスだったかな? あ、日本語だと非運動性熱生産だ。つまり運動じゃない日常生活での消費エネルギーってことです!」
ふむ、初めて聞いたな。ってか、よくそんな言葉の羅列覚えられるな、凄いな。
「意外とこのニートが下手に運動とかするよりもカロリーを消費してるらしいんですよ! だからエレベーター使う代わりに階段使ったりとか、ちょっとしたことに気をつけてますね。ちりつもって言いますからね!」
ふむ、彼女の体型維持には意外と細やかな努力が隠されていたんだな。しかも、それが自分の中で努力にならないようにすることで継続性も担保している。流石、賢いだけのことはある。
「あーでもやっぱり結局体質じゃ無いですかね?」
おい、それを言ってはお終いだろう。それさえ言わなければ後はなんでも良かったのに……
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ふぅ、今日は本当に危なかった。心が折れそうだったし、ネタも思いつかなかったし。番外編は大事ですね!!
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