第448話 お取引とお引取り
「ようこそいらっしゃいました。では、こちらへどうぞ」
私はそう言われてあるビルの一室に迎え入れられた。そう、今日は敵陣のど真ん中での交渉を行いに来たのだ。
何もわざわざ敵のホームでする必要はないだろう、という考えもあるだろうが、だからと言って相手が超巨大企業であることも無視できない。会社としてはまだまだ我が社は小さいのだ。
「本日はご多忙の中ご足労いただきありがとうございます・・・」
そんな社交辞令から始まり司会者の自己紹介、そして参加者の自己紹介へと移っていった。
今回は、うちの会社に買収打診が来てからの初めての会議だ。流石に会議自体ちゃんと行わなければならないし、私としても久しぶりに緊張している節がある。
えーっと株式会社は株式の半分以上を持っていかれたらその人に全ての決定権が移ってしまう。それは私が社長であるかどうか関係なしにだ。
そして、私たちの会社は非上場でその株式が誰でも買える状態には無い。つまりは今の株主から直接株を買う必要があるんだが……
って私は何を考えているんだ。現実逃避せずにちゃんと向き合え、私が後輩と一から作り上げてきたこの会社を本当に売却してもいいのかどうかを見極めるのだ。
いや、違うな。なんとか買収されずに済むように事を運ぶのだ。私たちは別に金儲けをするためにこの会社を運営しているのではない。自らが面白いと思うことを普及するために行なっているのだ。つまり、どんなに小さくても、城が必要なのだ。
やはり初めてのことである程度気が動転している気がする。頭がまともに働いていない感覚だ。
「まずは買収打診理由について説明していきたいと思います。我が社はゲーム会社として主に携帯ゲーム機を使ったゲームを開発してきました。しかし昨今のVR技術の流れの中で我々は新たな風をもたらす必要があると考えました。そこで目に留まったのが今最も勢いのある御社に白羽の矢が立ったというわけであります。具体的な資金は・・・」
と長々とした話を聞かされた。うん、まあ要約するとVRの波に乗れなかったからちょっとウチ来いや、ってことだな。こういう時は後輩の単刀直入さが恋しくなるな。
私たちはずっとVRゲーム、いやVRMMOを作るために研究開発を進めてきたのだ。そりゃもうすでに携帯ゲーム機を開発に力を入れていたら開発に手を回す余裕はないだろうな。
そして、その溝を埋める為に最も効率の良い手段は買収になる。企業としても廃れない為の真っ当な戦略を取っていると言える。だが、
「申し訳ありません、今回の件はお断りさせていただこうと思っております」
ッキーーーン
私がその言葉を発した時、その場が凍りついてしまった。先方もまさか断られるとは思っても見なかったのだろう。皆が驚きを隠さずにこちらを見ている。
だから嫌だったんだ。個人的に断るという行為は非常に苦手だ。心が痛むし何よりも労力を使わされる。
「え、えーっと資金的な問題でしょうか? こちらもある程度まででしたら増額の余地がございますが」
「いえ、現段階ではウチの会社を売却する予定はありません。ですので今回はどうかお引取り願えないでしょうか?」
そこからは平行線の議論が続いた。向こうからはそう思いたいのか資金的な問題だと捉えられ、こちらとしてはこれに関して金では無いため完全なるねじれ状態だったのだ。
そんなこんなで初日の会議は終了し、まずは無事に会社を守ることができた。
だが、本当の戦いはこれからだった。
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ん、難しいな。なんとなくノリで始めたくせにゼロ知識だから非常に難しい。
想像と妄想でなんとか補っておりますが、ガチの人が見たら全然違わい!ってなるかもしれません。その時は教えてくだされば修正いたします。
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