第435話 共感させられる羞恥心
「せ、先輩! この動画を見てください! 共感性羞恥がとんでもなくないですか!?」
後輩が真面目に仕事をしていると思ったら、自身の携帯で一つの動画を見せてきた。おい、まだ勤務時間内だぞ?
その動画は……いや、この場で内容について触れるのはやめておこう。
「ちょっと待て、共感性羞恥っていうのは人が恥をかいていたり、怒られたりしているのを見て、自分もそのように感じることを指す言葉だぞ? こっちが勝手に見て、勝手に恥ずかしいとか、イタいって思うの共感性羞恥じゃないぞ?」
「えっ!? そうなんですか? いや、でも周りのみんな私と同じ意味で使っていると思いますよ? 全国的に見ても」
「まあ、それはそうだろうな。ある時期を境に誤用が一気に増え出した記憶があるからな。私も最初は誤用の方の意味が正解だと思っていたくらいだからな」
「えーならもう新しい意味の方で良くないですか? 意味って時代と共に変わりゆくものですし、先輩だって古文を使っているわけじゃないでしょう? それにもう誤用が半数を超えていたらそれはもう誤用じゃないでしょー」
まあ、誤用論争をする上でこれは絶対に外せないテーマだよな。まあ、この意見もぶっちゃけ分かる。最悪、言葉なんて意味が伝わればオッケーなのだ。
「まあ、それはそうだが。仮にこの動画の人が一生懸命に取り組んでいたらどうだ? 本人は全く恥ずべきことだと思っていないのに、勝手に恥ずべきことと定義するのは失礼にあたらないか? それにそもそも誤用として認定される可能性がある場では使わない方がいいんじゃないか?」
「まあ、そうですけどー。先輩だからいいじゃないですか!」
いや、先輩だからダメなんだろ。別にいいけど。
「それに先輩だって一生懸命って使ってるじゃないですか〜。それも一所懸命から派生した言葉ですよね?」
む、これはイタいところをつかれたな。一生懸命は国民全員が一つの意味で理解しているから良い、というのは完全にブーメランとなって私に突き刺さる。
流石に一生懸命の方が普及率が高いとは言え、彼女はそれを許容しないだろう。許容するのならばそもそも揚げ足を取ったりしない。
「まあ、そうだな。だから別に私も目くじらを立ててダメだと言っているわけじゃない。ただ本来は間違っているということを伝えたかっただけだ。だからこれからも私の前を含め、自由に使ってもらって構わない。それによるデメリットも私はあずかり知らないがな」
「むぅー、じゃあそういうことでいいですよー! ってか、それならなんでそもそも揚げ足をとるようなこと言うんですかー」
「いや、ただ勤務中なのにプライベートな動画鑑賞をしている後輩がいるから少し意地悪したくなっただけだ」
「あっ……」
ポッポ、ポッポ
「あ、ちょうどお昼休みですね! じゃあ先輩お昼ご飯一緒に食べにいきましょうか!」
チッ、運に助けられたな。それどころか会計すら私に負担させるとは。なんたる豪運……
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意外と後輩ちゃんと同じ使い方をしていた方は多いのではないでしょうか?
私もそうだったと思います(そもそもその言葉をあまり使った記憶がない
先輩たちの世界線にならないように、みんなで正しい使い方をしましょう!
また、私はハムスターで日本語をまだまだ勉強中なので至らない点が多々あると思うのでいつでもビシバシご指摘ください!
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