第426話 邂逅直前


「先輩、もうこの後すぐですよ! 今日の午後には彼へのインタビューですよ! 準備はできていますか?」


 おいおいテンション上がりすぎだろ……まあ確かに彼に直接話を聞けると言うのはとても楽しみなことだが、そんなにウキウキワクワクすることか? まるで小学生の遠足前夜みたいじゃないか。


 まあ、そんな子供心があるからこそこの世界で上手くやっていけているのだろうが。


 それにしても準備なんて必要ないだろ。この身一つで彼の所に向かう……


「そういえば服装はどうするんだ? このままの姿ってわけにもいかないし、かと言っていつも使っている仮のアバターでも行く訳にはいかないんじゃないか?」


「あ。あーー!! 確かにそうじゃないですか! 完全に忘れていましたよ! なんでもうちょっと早く行ってくれないんですかー! もうー!!」


 はぁ、テンションが上がっているから。驚き方から困り方まで全てハイテンションだな。効いているこっちがゲンナリするレベルだ。


 だが、服装に関しては何も考えていなかったのか。確かに急ピッチで進めたのだが、まさかそんな落とし穴があるなんてな。しっかりして欲しいのはこっちだ。


「まあ、直ぐに用意できるだろ。プレセットされてあるアバターのどれかでいけばいいだろう」


「えーヤダですよー! それはあくまでもプレイヤーになり切る為のものであって、彼に会いに行くための服装じゃないではありませんか!」


 うむ、確かにそうではあるな。テンションが上がっていてもしっかり反論はするのだな。


「それに、もし、万が一ですがインタビュー中に誰かがやってきたらどうするんですか? 彼の部屋を破壊不能オブジェクト化して誰も入れないようになんてできる訳ないから一応、その場にいても誤魔化せるような格好はしないといけないと思います!」


 ふむ、本当に饒舌だな。もしかしてこの人はテンションが上がると脳の回転も猛スピードになるかもしれない。大変恐ろしい生物だな。


「それで、お前はどうしたいんだ?」


「そりゃ、新たに格好を作りますよ!」


「今からか?」


「今からです! とは言ってもそんなに時間はかかりませんよ! 顔バレしないように顔は隠さないといけませんから、それを考えるとフルプレートアーマーが無難ですよね? それで彼の自室にいてもおかしくないような雰囲気となると必然的に候補は絞られてきます! 後は私の好みをふんだんに入れて……」


 おいおい、本当に絶好調だな。それにしてもフルプレートアーマーって、それは果たしてインタビューをする側の格好なのか? しかも好みを入れようとするなんて……あと数時間程度しかないぞ?


 本当に暴走列車と化したら止まらないな、彼女は。


 まあ、確かに彼も魔王装備としてフルプレートアーマーを持っていたから大丈夫だろう。後は時間が足りるかどうかだが……


 ❇︎


「はぁ、はぁ、はぁ、できましたよ先輩!」


 完成させてしまった。やるべきところではちゃんとやりきるからこちらとしては何もいえないんだよな。


 アバターを見ると、簡素ではあるものの、彼の赤みがかった装備とは反対に黒をベースにうっすらと青く光る鎧になっていた。素晴らしい出来だ。彼女自身はもっとディティールがー、と嘆いていたが。


「よし、ではいくか」


「はいっ!」









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私は最近、ほうれん草の花言葉が「健康」だと知ったのでそれでお願いします!!

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