第424話 思考トレース
「はい? ちょっと彼、放射能で無茶苦茶になっている魔王の自室に従魔を召喚しちゃいましたよ!? 一体何を考えているんですか!?」
放射能で無茶苦茶になっている魔王の自室、ってなんかツッコミどころしかないな。前半も後半も非現実すぎるだろ。
そして、これだけ聞くとなんて酷いことを! と動物愛護団体が糾弾しそうな内容だが、どうせ彼のことだ。きっと何か考えがあるのだろう。
「もしかして従魔にも放射能の耐性をつけさせようとしているんじゃないか?」
「あーなるほど。確かに自分が耐性を獲得できたのならば従魔にもそれができない道理はないですね。ですが、従魔はNPCで彼と違って死ぬことができません。まあ、厳密には死ねますがそうなると蘇生するのに面倒臭い手間がかかりますし、何よりも彼がそんなことをするとは思えません!」
確かに私もそう思う。彼はああ見えて配下には優しい性格をしている。以前、悪魔に筆頭従魔のハゲタカを殺されたときは、七大罪の憤怒を獲得するほどには怒れるとても良い上司だ。
「だったら殺さないんじゃないか?」
「へ?」
「ほら、彼には回復スキルがあるだろう? 死なないように回復し続ければ耐性スキルを獲得できるんじゃないか?」
「うぇ〜、なんですかその悪魔みたいな所業は。って、彼本当にやってるし。本当にこの人従魔に愛情注いでるんですかね?」
ま、まあ愛情の形は人それぞれだしな。時には大きすぎる愛が歪んだ結果を生むことも往々にしてあることだろう。
「あれ、そういえば今かれが使っているスキル初めて見ますね。これも選定で作られたスキルでしたっけ?」
「ん、どんなスキルなんだ?」
実は、彼が選定で新たに作ったスキルに対して地味に興味がある。なぜなら私は選定はその人の思考が出ると思っている。
どれとどれを組み合わせるのか、というのはそれらに対してどのような共通点であり相違点を見出しているか、ということでもある。
彼が何かを感じ、考えた末に生まれたのが選定されたスキルであるから。それを見ることで彼の思考回路に少しでも近づこうという訳だ。
「えーっと、このスキルは狂愛開花っていうスキルですね。回復だけでなく、味方にバフをかけたり敵にデバフをかけたりすることもできるようです。統合されたスキルは……慈愛之雨、効率化、禁断の果実、ポジティブセンスの四つですね」
ほう、その四つか……分からんな。
どうしてこの四つを選んだんだ? 慈愛之雨に効率化を組み合わせることで回復なり何なりの効率を良くしたい、というのはわかるが、そこに禁断の果実とポジティブセンスを組み合わせた理由は?
ってか、ポジティブセンスってなんだ!? 彼はこんなスキル取得していただろうか。
うむ、私が彼の思考回路に追いつくのは死ぬまで難しいかもしれない。私もゲームの世界で死んでみようかな?
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