第423話 接触の予感


「あ、彼が死んでますね。今回は……ん、放射能!? こ、これで自殺するって中々の度胸というか、流石彼ですね」


 確かにそうかもしれない。そもそも自殺する人ですら少ないと言うのに、その中でもこの死因なのは珍しいだろうな。


 確か、コレを使ってくるボスも存在しなかっただろうし、この死因は本当に珍しい。


「先輩ーなんでこの状態異常を残したんですか? 別に先輩権限で消すこともできたじゃないですか」


「そうだな」


 そもそも何故この状態異常が存在するかの説明からしなければならないな。


 と言ってもそんなに特別な理由があるわけでもない。別に私自身ゲーム内から完全に削除しても良かったんだが、私個人としてリアリティのある世界の創造を行いたいという欲の方が上回っただけだ。


 ただ、ボスとしてそれをゴリゴリ使うのもそれはそれで違うと思ってボスは登場させていない。


「特に理由はないぞ。別に私たちが住むこの世界にもあるものだし、それ自体は別に悪じゃないだろう?」


「まあ、それもそうですねー。リアルじゃできないことをやるのがゲームなんですから、ファンタジーも非現実でもなんでもありですよねー」


 そうだな。でもそれで傷つく人が生まれるのは論外だ。楽しむ為のもので傷つくのは本末転倒だからな。


 その点、現状はいい塩梅だと思っている。


「はぁ、ってかこの調子だと彼に攻撃が一切通らなくなる日も遠くないかもですね!! 全くどこまで行ってしまうのでしょう……」


 そうだな、この話題はもう何回目にもなるが、本当に気になるな。もはや今の彼には強くなりたいという以外にも何か狂気的なものを感じる。


「あ、そうだ。彼に直接聞いてみる、というのはどうだ?」


「へ?」


「ほら、どんなサービスでも満足度調査みたいなのはあるだろ? そんな感じでアンケートと銘打って彼にインタビューをしよう」


「いやいや、満足度調査なのに彼にしか聞かないんですか? あっ、そっか!」


「そう、彼以外にも聞けばいいのだ。ただ質問内容は普通のごくありふれたものだ。ただ、彼には直接の我々が出向いて聞きたいことを聞けばいい。彼も一応こちら側なのだから快く引き受けてくれるんじゃない?」


「た、確かに。他のプレイヤーへの質問は他の社員に、いやどうせ質問内容は同じなのだから、botにでもやらせればいいですね!」


「そ、そうだな」


 流石にこういう所は賢さを感じるな。ご飯を食べているときはほぼ動物なんだが、理解そして応用の分野においては物凄く長けている。


「あ、しかもアンケートに答えてくれた人に報酬アイテムを渡せば、確実に彼を除いたプレイヤーを強化させることがてきますね!」


 ほらな? 一を理解すると十を提案してくる。まったく優秀な後輩だ。


「よしじゃあ記念にご飯食べに行きましょー!」


 ご飯に目がないことを除いては、だがな。


 ってか、なんの記念なんだ?

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