第421話 魔物の長
「えっ、なんですかこれは! 彼の動きにばかり注目していたら魔王国が大変なことになっていますよ! 先輩!?」
いや、別に最後の二文字は要らなかっただろ。私が見たところで何かが変わる訳でないのだから。
ん、魔王国だって? それは気になるな。
「どうしたんだ?」
「いや、なんかプレイヤー同士で争ってるんですよ。しかも人間対魔物に分かれて」
ほう、それは興味深いな。
「なぜそんなことになったんだ? 人間と魔物のプレイヤーってそこまでいがみ合っていたのか?」
「いえ、恐らくこれは最近、魔物プレイヤーの動きが活発になってきたことに由来すると思われます。なんでも、かなりの数の人間プレイヤーがその魔物集団によって襲われているようです」
そうか、それでその報復という訳なのだな。
「ん、でも元々人間プレイヤーも魔物プレイヤーを襲っていたのではないか?」
人間からすれば魔物は狩るべき存在であり、それがNPCかプレイヤーかという差異はほとんどないはずだ。つまり、元々魔物側から恨みを買われてた、とうことだ。
「あーまーそれは多少はあるでしょうけど。魔物プレイヤーはそれを考慮して魔物という選択を選ぶのではないですか? それにそういうのはあっても個人的な問題になりますから、PKに類することだと思われます」
それもそうか。魔物には後天的にしかなれないからな。でも、それでも塵が積もったのかもしれない。
ん、そもそも魔物プレイヤーって人間と戦えるだけの数がいるのだろうか。決して少なくはないと思うが、それでもほぼ全てのプレイヤーが人間を選ぶだろうから、どうして絶対数が少なくなる。
その中で人間対魔物になるとどうしても人間の方に分があるように思えてならない。
「あ、そうか。彼がいるから魔物のプレイヤーは気が大きくなれるし、こう言った戦いも成り立つのか。普通に考えて魔物と人間じゃいくら地の利を生かしていると言っても数の利で負けるだろう?」
「それはそうかもしれませんが、今回の戦いには彼は参加していないみたいですよ?」
「え? ……戦場は魔王国ではなかったのか?」
「いや、魔王国ですよ? でも彼の姿はどこを探しても見つかりません。彼の部下のプレイヤーなら見つかるのですが。って、彼は普通に今自室にいますよ?」
ま、マジかよ。そんなことがあるのか? 自分の国に攻め込まれてるのに国のトップが対応しないなんてことがあるのか? い、いやそりゃ日本のようにシビリアンコントロールがなされているのならまだしも、圧倒的な武力によってこの国はできたんじゃないのか?
「それだと魔物側が苦しいんじゃないのか?」
「はい、結構今は押し込まれていますね」
だよな。どうするんだ? このまま何もせずに彼はただ自国民が負けるのを見守るというのか? 彼の考えていることが一向に読めない。
「あ、彼が自室から出てきましたよ! って、え? 従魔に乗って空へ旅立ちましたよ? お国のことはいいんですかね?」
んー? ますます理解に苦しむぞ彼は一体何を狙っているんだ?
「あ、彼が戦場の真上まで到着しました! なるほど彼は上空から戦に関与するつもりなんですね! って、え?」
「あ?」
彼女の素っ頓狂な声に意識を奪われスクリーンを見てみると、そこには大きなキノコ雲が生成されていた。
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魔物を使役するゲームじゃなくて魔物が自分となるゲームってありますっけ?
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