第420話 彼神
「あ、そういえば先輩、彼が神様になろうとしているって言いましたっけ?」
「……は? それは本当か?」
「疑ってるんですか? こんなことで嘘つく必要ないですよ私。それに、私だって最初は目を疑いましたよ?」
「因みにそれはどういう風の吹き回しなんだ? 彼がいきなり天啓を受けた訳でもないのだろう?」
「はい、彼は何の用だったか教会に赴いたんですよ。そしてなんと、そこにいた神官のプレイヤーを拉致して自分の部下にしてしまったのです」
「ほぉ、それは……珍しいな」
彼自ら自分がプレイヤーであることを第三者に明かしたということか? しかし、彼がそんなリスクを犯すとは考えづらい。彼はそこまでして神になりたかったのか? それに教会に行った用事も気になる。
「それでですね、その神官に信者の獲得を任せて、本人は教会作りまで行ってしまいました」
「しまいました、ということはもう完成しているのか?」
「はい。それも結構立派なものが」
そう言って見せられた画像には確かに立派な教会が建っていた。うーん、これを見るとやはり彼は自身が神になることについて積極的なようだな。
「だが何故そこまでして神になりたいのだろうか?」
「え?」
「ほら、別に彼はわざわざ神にならなくても神のような力を持っているだろう? こんな労力とリスクをかけてまで神になることのメリットが思い浮かばないのだが」
「そうですねー、普通に支配欲だとか人の上に立ちたいっていう気持ちからじゃないですか? 信者がいて困るって人はそんなに多くないんじゃないですか?」
それはそうだが、どうにも違和感が残る。彼の今までの行動から、私の勝手な想像だが合理的で自分が望んだ物事に対して最短距離で突き進んでいく、というイメージがある。
そのイメージと、彼の神格化はどうにも合致しないように思えるのだ。神になった先に彼が何を求めるのか、それが全く想像できない。新たな方向性を模索している、という可能性もあるし、単純になりたかっただけ、という線もあるが、どうも気掛かりなのだ。
彼の行動原理は一貫して強くなることであるはずだ。彼は神になることで大幅強化しようとしているのか? その為に魔王がプレイヤーであるというリスクを冒したり、信者集めや教会作りを行なっているのか?
全く分からないな。まあ、だからこそ彼は面白いのだが。
「そういえば先輩って、神様とか幽霊とか死後の魂、世界とかって信じている派ですか?」
私が一人思案していると、彼女が不意にそんなことを言い出した。これに関しては随分と前に自分の中で答えを出していた気がする。
「そうだな、私はどっちでもある、と思っているぞ」
「どっちでもある?」
「あぁ、人間とは信じたいものを信じる生き物なのだ。それらの存在を信じて救われる人、救われたい人は信じるだろうし、信じたくない人は信じないのだろう。だから結局人によると思ってる」
「へー、で先輩はどっちなんですか?」
「ん?」
「え? だからどっちなんですか。はぐらかさないでくださいよー!」
「はぐらかしたつもりはなかったのだが、まあ、いたら嬉しいとは思っているぞ」
「へー、意外ですね! 先輩なら問答無用でいないっていうと思いましたよ!」
まあ、正直なところどっちでもいいのだ。いてもいなくても私は見ることも感じることもできないのだから。
——————————————————
小説だけで食っていける人って何なんですかね?
それこそ神様だと思うんですが()
皆さんにとっての神を教えてくださいっ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます