第405話 渋滞事故


「おっと、どうやら彼が先ほど進化させたカメちゃんを引き連れてダンジョン攻略に向かうようです!」


「ふむ、彼はいつも何かしらしているな。その中でもどこかしらダンジョンに行っている気がするんだが」


「え、何言ってるんですか先輩、当たり前じゃないですか。わざわざゲームにログインして何もしないなんてどんな暇人の遊びなんですか! それに、ゲームにダンジョンは付き物でしょう? 強くなる為にダンジョンに行き、ダンジョンにいく為に強くなると言っても過言じゃないんですから!」


 うっ、何の気ない発言にド正論で返されてしまった。ぐうの音も出ない。


 でも確かにゲームにはそういう側面があるよな。もはや何の為にそれを行なっているかは分からないが、それを考えるのは野暮で、ゲームという行為そのものを楽しめる人ではないとダメなのだろう。


 そういう意味では私は歳を取るごとにゲームからは遠のいていっているような、そんな気さえする。ゲームをする時はどうしてもリサーチというフィルターがかかってしまうし、純粋にゲームを楽しめたのはいつが最後だっただろうか。


 こんな大人がゲームを作っていると思われると夢がないな。いや、案外人に夢を与えている人というのは夢がないのかもしれない。それこそ、アイドルが清廉潔白を求められるように……


「先輩また考え事ですか? ってかそんな考えることあります? まあいいです、それよりも先輩に言わなければならないことがあります」


「言わなければならないこと?」


 私は思考の海から急浮上させられ、よく分からずに無意識に応答した。しかし、次の彼女の言葉で私の意識は強制覚醒させられた。


「なんとこのダンジョン、悪魔の城に繋がっているんです!」


「はぁ? 悪魔の城?」


 え、何それそんなものが存在するのか? ってか存在していいのか?


「悪魔の城とはその名の通り悪魔たちが巣食うお城なんですが、全部王都の近くに位置してるんですよねー。だから彼が王都近くのダンジョンに行くという時点でもしやとは思っていたのですが、ちゃんと漏れずに回収してきましたね」


 ん、ちょっと待てちょっと待て。一から十まで何一つ理解することができなかったのだが、そもそも悪魔城って複数個存在するのか、こういうのってオンリーワンだから価値が生まれるものじゃないのか? そんな何個も何個もあっていいのか?


 そして、漏れずに回収するってなんだ? スタンプラリーでも実装しているのか?


 私はどの疑問から解消すれば良いのか分からず、結局口から出たのはヘンテコな言葉だった。


「な、なんで王都の近くに魔王の城があるんだ?」


「え、魔王の城? 悪魔の城ですよね? 王都の近くにある理由は簡単ですよ。だってその方が悪魔にとって人間を支配するのに効率が良いからですよ。頭を押さえれば勝手に多くの人間がついてきますからね。先輩でもそうするでしょう?」


「あ、あぁ。そ、そうだな」


 私はショート寸前の頭で悪魔城へと入っていく彼を見つめるのであった。






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