第397話 型が無い女
「はぁー眠たい、眠たーい! そうだ、こんな時には甘味を食べに行こう!」
その日の始まりは世にも奇妙な彼女の第一声から始まった。もうこの瞬間から今日の私の運命は決まっていたのかもしれない。
「えーこの時間にはお店は開いていないので、作ります!」
「作ります!?」
因みに今は午前0時過ぎ、ちょうど日が跨いだ時間だ。さっき牛丼をたらふく食べたというのにこの女は何を言っているんだろうか。本気で正気を疑っている。
「先輩、オフィスにキッチンありましたよね?」
「あぁ、確かあったはずだ」
社員がオフィスで小腹を満たしたい時や、残業する時とかに使うからな。因みに使用率ランキングトップは圧倒的に私だ。
それなのにあったはず、と言ったのは無意識に彼女に帰って欲しかったからかもしれない。
「オーブンはありましたっけ?」
「あぁ、恐らくだがあったはずだ」
こちらは彼女がどうしても欲しいというので設置したものだ。因みに使用率ランキングワースト一位は当然彼女だ。女性社員がたまにクッキーを焼くのに使われるくらいで、最近では文鎮の方がまだマシだと思えるほどだ。
それなのにあったはず(以下略
「じゃあ作るのはチョコですね!」
「チョコ!? カカオから作るっていうのか?」
「は、そんなわけないじゃないですか! チョコを使ったスイーツを作るってことですよ!」
「は、はぁ……」
「んー何作ろっかなー。フォンダンショコラもいいし、無難に生チョコ、トリュフでもいいなーでももっとガッツリしたもの食べたい気分なんだよなー」
ガッツリ!? ちょっと待ってこの人酔っているのか? さっきの牛丼チェーン店で私が見えていない隙にハイボール三百杯くらい飲んだのか? おかしい、おかしすぎるぞこれは。
「んーよし、テリーヌショコラにしましょう!」
「て、テリーヌ??」
「あ、でもまずは型が必要ですね。型ってどこに売っているんでしょう?」
いや、スイーツ屋さんが開いてないから自分で作る流れになったんだろう? それなのにどうしてテリーヌの型を店で調達しようとしてるんだ?
「ん、そういえば前オフィスに買っておいたんでした! 忘れてました忘れてました! これで大丈夫ですね! 材料はコンビニで調達してっと……あ、コンビニには無塩バターが置いてませんね」
「は?」
「無塩バターがないテリーヌショコラ作れないじゃないですか! もう帰って家にストックしてるアイス食べましょ」
……最初からそうしてくれ。私はなんでこんな時間にコンビニを何軒も回らねばならないのだ。
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少し短めです。今月は超絶怒涛の甘党を誇る作者が甘味の購入を禁止しておりました。そんなハムスターがどうしても食べたくなって禁断症状が発生しかけたので小説に昇華することでなんとか鎮めました。
あと五日間、私は甘味を購入せずにいられるのでしょうか?
因みに禁止しているのは購入なだけで、、、、、
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