第393話 物語の主人公


 彼の所業に何故か意気消沈してしまった彼女は気分を変えると言って退出した。そのため、私が彼の監視業務を引き継ぐこととなった。


 彼は、地獄の騎士団を倒した後、追手がいないことを確認し、あろうことか獄界観光を始めた。自分が狙われるというのになんと泰然としているんだろう。これが強者の余裕って奴なのか。


 あ、でも一応見つからないための手は打つみたいだな。彼は従魔のカメと合体し、擬態スキルを発動した。


 この擬態スキルは周囲に溶け込む、というスキルのはずだが、こう言った場所で使うと自分が周りと馴染んで見た目がガラッと変わってしまう。本来の擬態とは意味合いがだいぶ異なってると思うのだが、そういうものなのだろうか?


 そして彼はそのまま鍛冶屋へと足を運んだ。


「鍛冶屋?」


 ゴホン、失礼取り乱してしまったようだ。でもまあ確かにそうだよな、新天地に辿り着いてまずやることといえばどんな装備を入手できるか、だろう。装備は強さへと直結するからな。何もおかしいことではない。


 ただ、彼が行っているということに対して違和感があるだけだ。


 そして彼が購入した武器は、両手斧の殉炎ゲルギオスというものだった。炎をイメージして真紅を基調に作られているから普通に見た目としてもカッコいい。


 それにしても彼が斧か。少し意外だな。


 今まで彼は武器と言えば剣を使っているイメージだ。まさか今日から斧に転向するのか? 使えないこともないんだろうが……


 ん、ちょっと待てこの武器属性武器じゃないか? 属性武器というのは武器自体に属性が備わっていて物理攻撃だけでなく属性攻撃も可能になる。つまり、一撃で二度美味しい状態になるわけだ。


 そしてこの武器の属性は炎、火ではなく炎だ。これはかなり強力だぞ? それをあの魔王こと彼が扱うのか……彼女がこれを見たらどう思うんだろうな。


「げ、なんですかこれ」


「あ、」


「なんで先輩が見てたらこんなことになるんですかもー。無茶苦茶強そうな武器手に入れてるし、何なら閻魔の手下と遭遇してるじゃないですか!」


「え、閻魔の手下?」


 慌ててスクリーンを見るとそこには両者向かい合って火花を散らしている二人がいた。一方が彼だからもう一方がその閻魔の手下なのか。


 ただ、一つ言わせて欲しいことがある。私が見ているからこうなったのではないということを。そもそも私が見ようが見まいが結果は変わらないのだ。私がどう足掻いたところで未来は変わらないのだ。


「それにしてもこの武器は強いですね。いくら閻魔の手下の中で最弱とは言え圧倒していますよ?」


 なんだそのアイツは四天王最弱、みたいな言いっぷりは。なんか可哀想だな。


 それに武器が強くなくてもどうせ圧勝しているんじゃないか? 武器が新しいせいで、戦いかたも目新しく見るのだろうが。


「あ、でもこれ悪くないですね。斧が非常に彼にあっています。まるで、無双ゲームの主人公みたいです」








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複数話投稿しすぎると読者様が追いつけなくなるという現象が起きていると考えたのですが、実際のところどうなんでしょうか?


皆様の感覚を教えていただけると嬉しいです!!

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