第389話 回復と再生


「先輩、非常にまずい事態が発生しました」


 それはクラン抗争への構想を膨らませている時のことだった。彼女は何気なくいつものように彼の様子を確認したのだろう、しかしその顔はとても真っ青だった。


「先輩、鴉狼一夜に気を取られてHP高速回復のこと完全に忘れていませんでしたか?」


「ん、確かにそうだな。完全に忘れていた。だがHP自動回復は前からあったスキルだろう? そのスピードが少々早まったくらいで何の問題があるんだ? 彼の強さはそんなに変わらないだろう?」


「はい、私もそう考えておりました。今の今までは。しかし、このログを見てください。まず、彼がHP高速回復スキルを獲得しますよね、すると何故かそれが再生と統合されることになります」


「統合?」


 HP高速回復と再生……嫌な予感しかしないんだが。


「先輩のその顔を見れば私も何が言いたいか分かります。どうせロクなスキルは生まれないのだろう、私も直感的にそう理解しました。そして出来上がったスキルがこちらになります」


 まるで三分クッキングでも見せられているかのような流れで見せられたそのスキルは私の予想を遥かに超え、驚愕を露わにするには十分なものだった。


「ちょ、超再生!?」


「はい、そうなんです。この強さを説明するためにまずはHP自動回復とHP高速回復の効果から説明させてください。前者は二秒に一度、後者は半秒に一度回復すると言う効果で、それぞれ熟練度に応じて回復量が増加します」


 うむ、もうこの時点でぶっ壊れと称するのには十分な性能をしている。HP高速回復なんて半秒に一回だぞ? そもそも半秒と言う単位が使われることすら珍しい。それくらい半秒とは短い時間なのだ。つまり、常時回復していると言っても過言ではないのだが。


「そんなスキルが再生と統合されてしまった、と言うことか」


「はい。超再生、このスキルの効果はダメージを受けた時、HPが残っていればMPを消費して全回復する。また、欠損が発生した場合は消費量が増える、と言うものです」


「お、おう……」


 今まではなんだかんだ短いとは言っても時間という枷にはめられていた。しかし、この超再生は死ななければ必ず全快すると書いてある。しかも、


「しかも彼には無限魔力と称号による確定食いしばりが存在します。つまり、実質的に彼は不死身となったのです」


「……」


 私は言葉を失ってしまった。いや、プレイヤーは不死だ、この世界では死んでも死なない存在だ。なのに彼はこの世界で死なない体になってしまったのだ。


 そりゃもちろん抜け穴が存在して殺せる可能性はなきにしもあらずなんだが、彼も彼で易々と殺されてくれる玉ではないだろう。


「これは、彼を倒すことのできる仕組みを何かしら作らないといけないかもな……」


 そうでなければ永遠と進化し続けるラスボス、ではなく攻略不可能なラスボスとなり、ただの無理ゲー、果てにはクソゲーと化してしまう。


 早急に対応しなければ……








——————————————————

前の話でHP高速回復をHP高速再生表記しておりました。心よりお詫び申し上げます。


と言うわけで彼を倒すにはどうしたらいいと思いますか?

悩める先輩にアドバイスをお願いします!(無理ゲー

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