第384話 初めてのフレンチ
「はぁ、なんか疲れましたね、本当に。彼をみているといつも体力を奪われている気がしてなりません」
まあそれもそうだな。彼はいつも奇想天外で私たちの予想を斜め上どころか次元を飛び越えてくるからな。むしろ体力を奪われないことの方が貴重だろう。そんな時にはやっぱり飯を食うことだけが私たちを救ってくれる。
「よし、偶には飯でも食いに行くか」
「え、珍しいですね先輩がそんなことを自分から言い出すなんて! 明日は雷ですか、雪ですか、それともハリケーンですか?」
おいおい、それ毎回言ってないか? 別に俺は後輩を飯にも誘わないドケチではないぞ? それこそ最低年一くらいは誘ってるだろ、多分。
それにハリケーンは北大西洋および北太平洋東部で発生する発達した熱帯低気圧のことだぞ。だから日本には絶対にありえない現象だし、起きたとしてもそれは台風だ。
因みにインド洋付近で発生した熱帯低気圧はサイクロンだし、オーストラリア西海岸に上陸した熱帯低気圧によって起こる砂嵐はウィリーウィリーだぞ。ここら辺はちょっとマニアックだけど覚えておくといいだろう。
「それでそれでどこに行くんですか? いつもみたいに寿司ですか? それとも焼肉? 天ぷらもいいですね!」
彼女は目をキラッキラに輝かせながらそう言ってきた。私としてはどこでもいいし、後輩の好きなところに行って欲しいという気持ちはあるのだが、それと同時に天邪鬼な性質も持ち合わせているため、今挙げられた三つにはどうしても行きたくなくなってきた。
それにどうせ何を提案しても喜ぶのだ。折角だから変化球を投げてみよう。
「じゃあフレンチとかはどうだ?」
「フレンチ!! いいですね最高じゃないですか! 行きましょ行きましょ!」
ほらな、言っただろ? さ、行くか。
❇︎
「うわー! 何ですかこの店は! とっても素敵ですね!」
いや、素敵な内装だと思うのならばなるべく声は出さないでくれよ。格式高いお店なのだから声量だけでいいから注意してくれ、マナーどうこうは私も詳しくないから。ま、個室だからそこまで気にしなくてもいいんだけどな。
「こちらはマグロとアボカドのタルタルのキャビア添えでございます」
「マグロ、キャビア……タルタル?」
あんなに多弁な彼女が言葉を失っている。これが食材の暴力か……いや、私としても非常に美味しそうだと感じている。この魔力に逆らえるのはこのクラスの食べ物を日頃から日常的に摂取している化け物か、食事に一切の興味がない化け物のどちらかだろう。
タルタルとは彼女が困惑しているようにあのタルタルソースのタルタルではなく、フレンチの一つで生の素材を切って調理したものを全般を指すようだ。多分。
今回の料理はそれらが円形に、しかも層を織りなすように作られている。一番下がアボカドとピクルスエシャロットなどが和えられたものの上にマグロを細かく刻んだもの、そしてキャビアが屋根を作り、最上位には卵黄がどでーんと鎮座している。
これが美味しくないはずがないだろう。
生きとし生けるもの全てに感謝して、後は作ってくれた人にも感謝して、
「いただきます」
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皆様に小説に求めるもの、を聞いて改めて初心を思い出しました。
もう地味に結構続けているので初心を忘れていたようにも思います。
初心忘るべからずって至言ですね……(至言って言いたいだけ
これはとっても私のためになりそうなのでこの調子でこちらでは小説に特化した質問をしていきたいと思います!
今回は……何にしよ、一旦自由記入で明日からお願いします!
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