第380話 驚きすぎな人
「あっ! ちょっと待ってください、彼が!」
「どうしたんだ? 一回落ち着いてみるんだ」
「は、はい。ふぅー。それでですね、今何が起きたのか説明いたしますと、先ず彼が自分の命を狙ってきたプレイヤーを助けた後、二人は解散しました。そしてその後、そのプレイヤーと彼が殺したプレイヤーが遭遇します」
「ん、なんでさっき彼に倒さればかりなのにまた遭遇できるんだ?」
「それがですね。この森は初心者のステージですから広場から比較的近いためリスポーンしてすぐに向かうことができるのです」
あーなるほど。確かに言われてみればそうかも知れない。彼もここで最初の死に戻りを敢行したのだからな。ホーンラビットに刺されまくり、毒キノコを食べまくり、挙句溺死しまくったのはここだったな。
「それでですね、再開したPKの二人は少し揉めたようです。どうして蘇生しなかったんだ、とかなんとか。そんな二人がいざこざしている時に駆けつけてくれたのが、そう彼だったのです!」
いやまあ確かに話の流れからして彼しか登場し得ないよな。今思うとこのプレイヤーはPKの相方とも彼とも解散してすぐ再開しているな。そういう星の下に生まれてきたのだろうか?
「彼はすぐさま先程倒した敵を再び血に伏せ、あのプレイヤーを救ったのです! 救われた少年、いや少女は改心することを決意し、その場でPK稼業から足を洗いめでたしめでたし、という結末に至りました!」
いやーおめでたい話だなー、とはならないぞ? 彼の初心者のフリから始まり、勘違いからのお節介人助けということだろう? 結果的に改心したから良い結末になったのかも知れないが、助けたプレイヤーがただの悪人だったらどうするんだ、全く。
あ、別に悪人でも余裕で倒せるのか。失敬、失敬。
「あ、彼がスキルショップに行きましたよ。彼御用達の始まりの街にある隠れ名店のお店ですね!」
あーそこか。そこは隠れ名店というか、まあそうだな。本来ならば始まりの街にあるはずのないスキルがたくさん置かれているのだが、その存在を知る者はほとんどいない、むしろ彼しか私たちも知らない、そんなお店だ。
まあそれもそのはず、スキルショップといえば各街に一つという固定概念があるからな。それを覆して街の隅から隅まで探そうとする方が稀有だろう。
そうなってくるとこの店を見つけられる人は、もう先の街まで進んでどこかしらで情報を得た人かもしくは、彼のように何故か辿り着いてしまった人、のどちらかだろうな。
「それで彼は今回何を買おうとしているんだ?」
「えーっとそれがですね……何のスキルかはさておき、彼はHP高速回復、というスキルを狙っているようです」
「HP高速回復!?」
「はい。しかも五千万もするようです」
「五千万!!!???」
そ、そんな五千万ってリアルだったら物凄い大金だぞ? まあゲームだからっていうのは大前提だろうが、それにしてもどれだけ高額な商品なんだ?
それに、この世界では値段とその有用性っていうのはほとんど比例する。オークションは除いてNPCが販売している商品はちゃんとぼったくられないように設計されているのだ。つまりは、このスキルには五千万の価値があるということだ……
はぁ、彼は一体どこに行ってしまうのだろうか?
「それで彼は一括で払っていったのか?」
「いえ、流石に五千万は持ち合わせていなかったようで、どうやら今からカジノに行くようです」
「カジノ?」
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こちらの後書きは本編とは差別化していきたいですよね。
でも何を聞いたらよろしいのやら……
いや、そもそも聞く、というフォーマットから外れるべきなのか?
悩ましい……
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