第379話 初心者狩りと魔王


「結局何だったんでしょうね、彼に接触してきたプレイヤーは。見た目も中性的でなかなか情報が拾いづらいですね。ちょっと監視してみますか?」


「いや、そこまでする必要はないだろう。別に悪いことをしていたわけじゃないからな。仮に初心者狩りをしていたとしても倫理的な問題であって我々が関与すべき問題ではないだろう」


「それもそうですねー、あっ!」


 ん? 何か気が付いたのか?


「彼が湖の中に入りましたよ! 懐かしいですねこの場所は! 全てが始まった場所、というのは大袈裟ですが、ここで神殿を見つけて海龍を倒したところから全てが始まったんですよね〜」


 と、後輩は今はしみじみとそんな風に言っているが、当時はもっと凄かったからな? イベントの為に作ったエリアを不当に攻略されただのなんだのと泣き喚いたんだからな? 確か。


 でも、そうなるとやはり彼に初心者時代なんてなかったように思うな。なんせこのゲームに降り立ってすぐに死に戻りを繰り返し、最初に倒したモンスターはスライムでもホーンラビットでもなくこの海龍なのだから。


 初心者の気持ちになれという方が難しい話だろう。


「あれ? ちょっと待ってください! 湖の所へ誰か向かっていますよ? しかも明らかに初心者じゃない人達です。ん、なんならさっきの人も混じっていますよ! あの人はやっぱり初心者狩りだったんですね!」


 彼女は自分の予想が当たってとても喜んでいるようだ。まあ、後輩に花を持たせてやるのも先輩の務めだからな、うん。


「ん、ってことはその初心者狩りの人たちは彼を追って来たってことか?」


「え? そりゃそう……あーそういうことですか」


 彼女は何かを察してしまったようだ。もちろん私はとっくの昔に気づいていたが。


「つまり、このプレイヤーは一対一で初心者と思われる彼と遭遇し、殺す機会を伺っていた。しかし、彼は実際は初心者ではないため殺す隙を見せることはなかった。だから仲間を引き連れてここまで来てしまった、というわけですね。そして彼らの過ちは彼が初心者じゃないのならば人数があれば勝てる、と思った所でしょうか」


「「あ」」


 彼とそのプレイヤーが再び邂逅した。彼は反射的に再び湖の中に姿を隠した。そして二度目の浮上で、陸に上がり初心者狩りと思われるプレイヤーを一瞬にして倒してしまった。


「はーやっぱりこうなりますよねー。たかが初心者狩りに彼が負けることは愚か、遅れを取ることすらないですよねー。知っていましたよこうなることは」


 彼女はどこか嬉しそうにそう言った。まあ、ずっと見守ってきた彼がこんなところで負けるわけがないことを再確認できたのが良かったのだろう。もしかして異世界に人々を転生させる女神はこんな気持ちなのかもしれないな。


 ま、そんなものは存在しないが。


「あれ? 彼はまだ気が付いていないみたいですよ? 本当は二人がグルなのに先程行動を共にしたプレイヤーが男の人に襲われていたと勘違いしたようです。これで無事に一件落着してしまったら彼はただのいい人じゃないですか!」


 ん、ってことは彼は自分の命を狙っている人なのに、その人の命を救ったと思っているのか? 面白いというかなんというか……普通気付くものではないのか?


「あっ! ちょっと待ってください、彼が!」







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朝活成功しました。

皆さん、今日一日お疲れ様でした!私は今からですが…


これが一人時間差。。

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